「タンカンはどう読んだらいいんだ」とウォール街の友人。日銀短観も国際語として定着したが、1日発表の3月短観は景況感は横ばいと出た。「小泉首相の人気も下がり始めたし、政治的に読むんだな」と言うと、「また政治的か」とうんざりした口調が返る。
ウォール街の小泉首相に対する疑念は深まる一方だ。それに輪をかけたのが日本政府による空売りの規制強化策だ。外国人投資家筋の空売りが売り浴びせになって東京市況を冷え込ませてしまうというのが規制の根拠で、大手米証券やスイス、ドイツ系証券など軒並み規制の対象となり、ウォール街は対小泉不信感を募らせた。
「外人投資家に対する差別待遇といった簡単な問題じゃないんだ。首相に期待している日本国民にはその虚言に目を覚ましてもらいたい」と友人たち。小泉革命の原点は市場原理を導入して非能率、不採算部門の構造を改革し、日本経済の活性化を図るところにあった。そのために「国民が痛みを分かち合おう」と明言したにもかかわらず、首相は「日本の金融界に痛みを与えないために、逆に痛みを外人投資家に押しつけた」とウォール街は見る。
「嘘(うそ)も身の芸」で上手に嘘をつけるのも首相の芸のうちというわけだ。空売りは日本の証券会社もやっているし、その「横行」もまた日本経済を正直に反映した市場原理の姿の1つ。しかも空売り規制で株価の値下がりを抑え、3月期決算の資産評価額を高くして日本の金融機関を救おうという日本政府の本音もウォール街は見抜いているから「事実3月の東京市況は上がり、マーチ・クライシスは去った」と皮肉る。
それでもウォール街は短観に関心を寄せる。機関投資家や投信の運用者は日本株の組み入れを減らし続けており、その比率は10%前後。もし短観どおり、日本経済が底打ちなら、買い出動しようかと、思案顔でもある。