経済財政諮問会議は6日、改革の基本方針と具体的なメニューを合わせた構造改革総合計画を6月に取りまとめる方針を決めた。税制改革や経済活性化戦略のほか、03年度予算の基本的な考え方を盛り込む。02年度予算で適用した「国債発行30兆円枠」に代わる新たな財政健全化目標も設定する考えで、2年目の小泉改革の針路を示すことになりそうだ。
諮問会議は当初、6月に税制改革の基本方針と工程表をまとめることにしていたが、構造改革を加速させるために、経済活性化の具体的戦略や予算編成の方向性など包括的な分野で改革メニューを示す必要があると判断。昨年6月に策定した「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)をさらに具体化した「総合計画」をまとめることにした。今後、閣議決定を目指し、諮問会議や政府部内で議論を進める。
03年度予算では、新たな財政健全化目標を打ち出すほか、02年度予算で1割削減した公共投資関係費や地方歳出の削減、社会保障関係費の抑制など歳出構造の抜本的見直しを継続して実施する方向を示す見通し。公共投資などの効率的な配分手法の確立に向けた改革実施案も盛り込まれる。また、予算編成を硬直化させているとの批判もある概算要求基準(シーリング)の見直しなど予算編成過程の改革も議論されるとみられる。
一方、経済活性化戦略では、地域限定で規制緩和を進める「特区」の創設や知的財産の活用策などについて、創設時期や中身を示すほか、デフレ克服のための追加的な政策が盛り込まれる可能性もある。
税制改革関連では、将来的な財政赤字の解消を目標に、社会保障や地方財政などの制度改革と税制改革を一体的に考えた基本方針を示す。そのうえで、所得税率の累進性の緩和や法人税の引き下げなどの具体的項目を実施時期とともに明示する方針だ。 【白戸秀和】
「30兆円枠」に代わる目標設定が焦点
経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が6月にまとめる構造改革の総合計画では、税制改革とともに03年度予算編成で「国債発行30兆円枠」に代わる財政健全化の目標設定が焦点になる。03年度は社会保障関係費などの歳出増で国債発行額が30兆円を上回るのは避けられないが、「財政悪化に歯止めをかけるための何らかの仕掛けが必要」(財務省幹部)なためだ。ただ、「30兆円枠」に匹敵するような妙案はまだ浮かんでおらず、新たな歳出抑制の目標作りは難航しそうだ。
02年度予算編成で「30兆円枠」が果たした役割は大きい。国債の新規発行を30兆円以内に抑制するのが至上命題だったため、景気低迷による税収の落ち込みを補う“隠れ借金”的な手法を使わざるを得なかった弊害もあった。しかし、「小泉内閣の公約を守る」という大義名分が歳出削減に大きな効果を発揮し、公共投資関係費の1割削減や社会保障関係費を圧縮するための医療制度改革につながった。
03年度は社会保障関係費の自然増などが見込まれ、財務省の試算では国債の新規発行額は35兆円を突破する見通しで、公共事業を3%カットすることを前提にした内閣府の試算でも34・1兆円に達する。
このため、諮問会議も「30兆円枠」は03年度予算には適用しない方針で、1月にまとめた「経済財政の中期展望」で、歳出の対国内総生産(GDP)比率を中期的な歳出抑制の目標として示している。ただ、03年度が始まったばかりでは、経済成長率の見通しがまったく立たず、GDPがからむ目標は定めにくい。
一方で、中期展望は2010年代初頭にプライマリーバランス(国債関係費を除く歳入・歳出の収支)を黒字化できると見込んでいる。回復の足取りがおぼつかない景気にも目配りしつつ、プライマリーバランスの黒字化に向けた第一歩を踏み出す「明確で国民に分かりやすく、かつ達成の実現性がある目標」(財務省)をどう設定するか。「30兆円枠」に代わる小泉内閣の次のキャッチフレーズが注目されている。 【川俣友宏】