国会議員の公設秘書をめぐる問題には、特別職国家公務員として給与を国から支給され
ながら、個々の議員が「採用権」を握っていることなど、制度自体の抱える特殊性が背景に
ある。
公設秘書は第1秘書、第2秘書、政策秘書の3人まで認められている。第1秘書と第2秘
書は議員が自由裁量で採用できるが、立法作業や政策提言を手伝う政策秘書は主に(1)
資格を得る国家試験に合格した者(2)第1、第2秘書歴10年以上で研修を受けた者、のい
ずれかから選ばれる。
だが、難関の国家試験に合格した「資格組」は全体の1割程度。現役政策秘書の9割前
後は(2)の「認定組」だ。
政策秘書制度の新設を提言した衆院議長の私的諮問機関「秘書問題に関する調査会」
のメンバーだった評論家、大宅映子氏は「政策秘書は導入の段階で突然『認定組』が出て
きて、本来の趣旨から外れてしまった」と語る。狭き門の「資格組」を避けて、ベテラン秘書
の救済などを念頭に動いた政治サイドの都合が、政策秘書制度をゆがめてしまった形だ。
また、公設秘書は奉仕の対象が個々の議員であるため「公務員でも非公務員性が強い」
とみなされ、普通の公務員のような服務規程がない。その一方、解雇制限がなく雇用保険
も受給できないなど、議員の落選、死亡というリスクも含め身分は極めて不安定だ。こうした
土壌が「ピンハネ」を含む議員の要求を拒みにくくしている。
一方、給与流用をめぐる過去の事件や辻元清美・前社民党政審会長の疑惑では、議員や
事務所が給与の振込口座を管理していた事実が明らかになった。これは、公設秘書の独特
の給与支給システムに起因する。
公設秘書は他の国家公務員と違い、給与を国から直接支給されない。衆院の場合は「委
任状をもとに衆院庶務部長が公設秘書全員分の給与を代理受領→振込先通知をつけて国
会内の都銀支店に一括振り込み→都銀支店から各秘書側へ振り込み」という複雑な手続
きを踏む。これだと実際に本人に渡ったか国は確認できず、不正に対するチェックが働かな
い。
「資格組」「認定組」の混在、公務員としての身分の不明確さ、それに給与振り込みシステ
ムの不透明さが、公設秘書の実態をあいまいにしているといえよう。