【フランクフルト=池上輝彦】独メディア最大手キルヒグループの中核企業キルヒメディアの破たん回避に向けた債権者らの交渉が4日、決裂した。欧州の複数メディアが報じた。再協議による打開策の見通しが立たなければ、週明けにも破産手続きを申請する可能性が出てきた。キルヒグループの広報担当者は5日、日本経済新聞に対し「(破産申請など新たな動きは)週明けの8日以降になるだろう」との見通しを示した。
キルヒメディアはサッカー・ワールドカップ(W杯)や自動車レースの最高峰「フォーミュラ1(F1)」など人気スポーツや映画、テレビ番組の放映権売買を統括する同グループの中核企業。従業員約4000人。独民放テレビ最大手の株式上場会社プロジーベンSAT1にも52.52%出資している。同グループは約65億ユーロ(約7500億円)の債務を抱え、資金繰りが悪化。独銀行団の支援も限界となった。
独ヒポ・フェラインス銀行など債権銀行団は先月末、豪メディア王マードック氏ら外資系企業のキルヒメディアへの出資と銀行団の緊急融資を組み合わせた救済策を提案した。だが、ベルルスコーニ伊首相傘下のメディア企業が約20%出資する構想にシュレーダー独首相が難色を示した。米ロサンゼルスで4日開かれた債権者間の交渉も融資負担や出資比率を巡り決裂した。
キルヒメディアが破たんすれば、同グループは事実上解体され、外資系による資産買収を通じた業界再編が動き出す。5月末から始まる日韓共催W杯にも余波が及ぶ公算がある。