原油と金の価格が上昇。もしかして世界中の投資家が平和と繁栄の時代が曲がり角を迎えたと感じてるのでは?日本人は政治家スキャンダルなんか気にしてる場合じゃないかも?
■ 原油価格上昇!!
原油価格が上がってきました。4月2日(火)現在のNY市場の終値は1バレル約28ドルで、1月の18ドルから3ヶ月で10ドルも上昇したことになります。上昇の要因となっているのは(1)世界経済の回復、(2)中東情勢の緊迫の2つです。
現在の価格は、世界経済が最高潮に達していた2000年当時の35ドル、90年の湾岸戦争時の40ドルという水準と比べるとまだ低く止まっていますが、上昇ペースはかなり急です。2000年冬から世界経済が急速に冷え込んでいった原因の一つに、石油価格高騰による生産コストの増加の影響があったことは明らかであることから、これ以上原油価格が上がってしまうと企業の利益の圧縮要因となり先行きの景気に不安が出ます。また、金融政策もインフレ懸念から引き締め気味になることが予想され、さらに景気を冷やすという悪循環をもたらしてしまいます。
■ 金価格も上昇 株と債券はさえず
金価格も上がっています。報道では「ペイオフ対策に金を購入する人が増えた」という記事が増えていますが、金に対する需要が膨らんでいるのは日本だけではなく、世界的な現象になっています。金が買われるのは「通貨」が信じられなくなった時です。日本では、ペイオフ解禁により銀行預金に対するリスクが高まり、財政状況の悪化により「円」の信頼性が薄れてきています。この様な状況で究極の逃避先である「金」にお金が集中するのはもっともです。
しかしながら、金は原油以上に歴史的に見れば安い水準に止まっています。現在の価格は1オンス(約31g)300ドル程度ですが、1979年のオイルショック当時は520ドルでした。米国の消費者物価は当時と比べると2.3倍程度になっていますので、当時の金の実質価値は現在の約4倍だということになります。この時は、(1)イラン革命、ソ連のアフガニスタンに侵攻等で世界情勢が緊迫していたこと、(2)第2次オイルショックによりインフレが爆発していたところに、(3)米国の石油王ハント兄弟の銀投機も加わって暴騰してしまったのです。
当時は、米国の消費者物価が年間14%も上がり、長期金利も2桁にのったため、「通貨」や「債券」をただ持っていると損してしまうという時代でした。このため、よりリスクの高い長期債や株式は敬遠され、株式は大インフレの間全くの横這いとなりました。
足許で日本以外の投資家が金を積極的に買っているのは、こうした忌まわしい時代がもう一度来てしまうのではないかという危惧があるからでしょう。長期金利はジリジリと上がり、株式市場は上昇に勢いが感じられません。昨年9月11日のテロ事件以来、冷戦終結以来、10年間続いてきた平和と繁栄の時代は曲がり角を迎えているという見方は根強いものがあります。
■ 欧州では中東情勢のニュースはもっと大々的に扱われている
筆者はロンドンに出張することも多く、BBCやFT(ファイナンシャル・タイムス)、エコノミストのような英国系のメディアに接する機会が多いのですが、これらのメディアでは、コソボ情勢が落ち着いて以来、ここ2年ほど中東情勢をずっとトップ級で扱っています。そして、日本のメディアのニュースを見るたびに、あまりにの扱いの違いに違和感を覚えます。
例えば、今年2月のブッシュ米大統領の訪日を含むアジア歴訪は「イラク攻撃の根回し」が目的であったことは、英国のメディアでは常識になっていますが、日本のメディアでは目を凝らして注意深く小さな記事を読んでいないと、そんな事が書いてあるのに気がつきません。3月29日(金)にイスラエル軍がパレスチナ自治区のアラファト議長府を戦車20台で攻撃した際も、日本市場の取引時間帯であったのにもかかわらず、報道は大きくありませんでした。
世界は日本のメディアにしか触れていない多くの人々が思っている以上に変化に向かって進んでいる可能性があります。その「リスク」は計り知れないものがあります。供給過剰による「デフレ経済」が、物価高騰をともなう「スタグフレーション」に変化する可能性があるからです。注意しましょう。1979年、金は1年で220ドルから520ドルまで暴騰したのです。
提供:株式会社FP総研