金融庁は4日、大手行を対象にした特別検査の結果について、全体の不良債権処理額と
ともにゼネコン(総合建設会社)や流通、不動産、ノンバンクなど「不振業種」向けの不良債
権処理額を別枠で公表する方針を固めた。12日公表する。金融庁は「市場などが注目して
いる業種に対する不良債権処理の進み具合を、わかりやすく示すことが信頼確保につなが
る」と判断した。
金融庁は当初、大手行の処理額をひとくくりで公表する考えだった。しかし、小泉改革の
最優先課題である不良債権処理の進み具合を「できるだけ具体的に示す必要がある」(金
融庁幹部)と判断し、不振業種を別枠とすることにした。ただ、個別の企業名は「検査対象と
なっただけでも、株価急落などにつながりかねない」(同)として明らかにしない。
一方、大手行は特別検査を踏まえ、02年3月期決算で総額7兆5000億円を超す不良債
権処理額を計上する。大手各行は12日、それぞれの処理額や自己資本比率などを発表す
るが、株価の回復もあって各行の自己資本比率はおおむね10%台を確保、8%の健全基
準を上回る見通し。
このため、金融庁は「公的資金の投入は不要」との姿勢は変えない方針だが、特別検査
を受けてまとめられたダイエーなどの再建策は「不十分」との見方が根強く、市場の不信を
ふっしょくできるかは不透明だ。 【木村旬】
金融庁の特別検査
大手行の大口融資先のうち株価や格付けなど市場の評価が著しく低下している企業に対
して実施。金融庁は企業の再建計画が不可能と判断した場合は、法的整理や債権放棄な
どをするよう大手行に求めてきた。実際に法的整理となったケースに青木建設、佐藤工業、
日本重化学工業などがある。