通信や自動車とともに、国内設備投資のリード役を担っていた電力各社の2002年度設備投資が1977年以来の低水準になる。小売り部門の自由化により、各社が値下げ原資を確保するため投資の抑制に踏み切っているためだ。
公益事業の電力各社は、過去、政府の経済対策のたびに「お付き合い」で投資の上積みに協力してきた経緯がある。しかし、地域独占にも風穴を明ける自由化の進展により、安易な設備投資拡大にも終止符が打たれた。日立製作所<6501>、東芝<6502>など重電各社は、電力向けビジネスの抜本的見直しを迫られる契機ともなる。
●ピークの1993年度から半減
東京電力<9501>など電力10社がこのほど発表した2002年度の投資計画は、合計で2001年度見込みより10%少ない2兆4456億円にとどまる。10社の投資はピークだった1993年度には4兆9340億円に達しており、今年度はその半分に止まる。東京電力が同比18%減の約8000億円と最大の削減幅にしたほか、四国電力<9507>など3社を除く7社が前年度より削減する。
若干増額する四国電力も、今後10年間新規の発電所建設を行わない計画を明らかにしている。各社の投資削減は「素材産業の不振や製造業の海外工場移転」(東京電力)による需要減退に対応するほか、料金値下げへの原資を確保する狙いだ。
また、電力の投資は供給の安定を最優先する結果、「過剰品質」になっていたことも否めない。各社は、そうした“贅肉”のそぎ落としにも取り組んでいる。
●重電部門再編の加速も
電力各社の投資抑制は、今後の自由化進展に伴い2003年度以降も継続される。これまで、電力を「上得意」にしてきた重電各社には、ボディーブローのように電力各社の投資抑制が効いてきている。
すでに、日立、富士電機<6504>、明電舎<6508>の3社が送配電機器の統合(日本エーイーパワーシステムズ社)に踏み切ったほか、東芝、三菱電機<6503>も今年10月に変電・系統システムを新会社に統合することで合意した。電機各社の半導体事業のように大再編に動き始めている。重電各社にとって、市場がピーク時よりも半減する衝撃は大きく、一段の業界再編が必至となろう。
○URL
・東電、「慣行」破る値下げ〜電力の地域独占崩壊へ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200203/06/20020306133521_61.shtml
[沖野宗一 2002/04/04 17:12]