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4月1日に発表された日本銀行（日銀）の短期企業経済観測調査（短観）の結果は、市場に静かな波紋を広げた。淡い期待が裏切られたと言っていい。市場は大企業製造業での景況感の回復を期待していた。それも良くとれば、下げ止まりだが回復ではなかった。中小企業を見れば、悪化が続いている。日銀の短観は、企業からの回答を集めた国内最大の経済調査だ。しかし、この調査に対しては日銀の意図が多分に反映されているという見方が根強い。
●本当は全国の淡い期待を抑え込みたかった日銀短観
日銀は何を伝えたかったのか。日銀は米経済の回復期待を受けて、国内景気もじきに回復の兆しを見せるのでは―という淡い期待感が世の中に出始めていることを敏感に感じ取っている。また「2月危機、3月危機なんか起きなかったじゃないか」と胸を張る小泉首相に対しては、速水総裁自らが官邸に乗り込んで公的資金の再注入を含む積極的なデフレ対策を求めた事もあって、憎しみにも似た感情が出始めていると言っても過言では無いだろう。支持率が低下しているとはいえ、ヒーローは今でも日本政治のトップに立っている。世間に流れ始めたその淡い期待、つまり日本はこのまま回復していくのではないかという期待を、どうにかして抑え込みたいのだ。
少しずつではあるが世間は緩み始めている。現時点でそれは危険な兆候かもしれない。構造改革の手を緩め、金融の再生も果たせない、また問題を先送りするだけだろう。そんなときに危険な期待を抑え込む必要は確かにある。しかし、日銀がどのような提言をしても、政府は振り向きはしない。政府にとって日銀は、都合の良い時に難題を吹っかけるだけの存在に成り下がってしまったかのようだ。今回の日銀短観の結果にも目立った反応はせず、マーケット自体もほとんどそれを無視している。日銀の威光の陰りを如実に表している。
●横浜市長選敗北から突然の緊急デフレ対策発表へ
短観発表の前日、横浜市長選挙で、与党側が推す現職が無所属の新人に接戦の末に負けた。政府・与党は、この敗北を重く受け止めている。都市住民の反乱が、また起きたのだ。それも小泉首相のお膝元の神奈川での敗北だ。はなから小泉総理は、勝った新人を裏では推していたとも取られかねない言動が目立ったのも事実だが、首相の率いる自民党にとって負けは負け。この敗北の前に日銀の短観は、思わぬ反発を招く事になる。与党は4月2日に中身はどうあれ、緊急のデフレ対策を打ち上げ、小泉首相に申し入れた。それは都市再生を強く意識した内容で、横浜市長選挙の敗北を受けた危機感の現われだ。
これに合わせて、再び日銀に対して一段の金融緩和と従来の手法にとらわれないデフレ対策を求める声が強まろうとしている。それも今回の日銀短観の結果が思わしくない事を背景にして求められるのだから、日銀にとってはヤブヘビになってしまった。
日銀は政府に内需刺激策などのデフレ対策を求めているのであって、探られたくも無い腹を探られるような事態は避けたかったのだ。選挙の敗北という事態を受けて、日銀の思いを実現するためにどうすれば最大の効果を挙げる事ができるのか。見誤ったとしか言いようが無い。日銀のセンスの無さを嘆く声が聞こえる。小泉首相はもうすでに日銀の味方ではない。またしても追い詰められた日銀。速水総裁の責任も一層重いものになってきた。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。