金融庁は大手銀行への特別検査の結果を12日に公表する方針を固めた。各行の自己資本比率は健全性の目安となる8%(国際業務行)を上回るとみられ、公的資金注入は当面、見送られることが確実というのだが、「また問題を先送りしただけ」と市場関係者は冷ややかに見る。
大手行の大口融資先のうち、「30社リスト」などと呼ばれ経営の悪化が懸念されていた大手企業をあらためて査定していた特別検査。その結果は12日に公表されるが、「風評被害を招く」として、検査対象の債権総額や不良債権に分類された総額などの集計結果だけが対象となり、個別企業に関する発表は行われない。
一方、大手銀行側も同日、検査結果を反映した業務純益や経常損益、不良債権処理損失などを発表、不良債権処理額は昨年11月時点の6兆4000億円から1兆円以上、積み増しされるが、自己資本比率はいずれも10%程度の水準を保つとみられる。
銀行にとっては、公的資金注入という最悪の事態をとりあえず回避できそうだが、市場では「金融庁と銀行の出来レースに過ぎない」と厳しい見方も出ている。
銀行各行は、3月末までに債権放棄や債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)などでダイエーや大京など過剰債務企業への金融支援を大盤振る舞いしたが、こうした手法は結局、「問題先送り」(銀行アナリスト)との見方が大勢で、いつほころびが出るか分からないものだ。
自己資本も、税効果会計や公的資金で“水増し”された脆弱(ぜいじゃく)なものであることには変わらない。封じ込めた危機がマグマのように噴出する恐れはいまだ消えていないのが実情だ。