2002年3月期末の大手銀行の株価が低水準に終わったことで、大手銀行株を保有している事業会社などで評価損の計上が相次ぐ可能性が高まっている。
期末の株価は、みずほホールディングス<8305>が30万2000円、UFJホールディングス<8307>が30万5000円、三井住友銀行<8318>が530円、三菱東京フィナンシャル・グループ<8306>が79万2000円、大和銀ホールディングス<8308>が86円となり、この1年で、UFJやみずほ、三井住友銀などは減損処理の区切りとなる50%超の下落となった。
4月2日、JR東日本<9020>と住友商事<8053>が有価証券の評価損計上を発表した。JR東日本は889億1500万円の評価損。みずほ株が評価損全体の半分に相当する440億円となったほか、UFJ155億円、三菱東京149億円、三井住友101億円など。その他の銀行株も含めると銀行株の影響は99%近くなる。
住友商事<8053>も、有価証券評価損約450億円のうち、三井住友、みずほ、UFJの3銘柄で約400億円を占めたという。総合商社各社は、2002年3月期決算について、これまでの会見などでも銀行株による評価損の見込みを指摘している。
セイコー<8050>も1日、みずほと大和銀HD株の合計で121億4200万円の減損処理を行い、2002年3月期の特別損失に計上すると発表した。昨年11月に発表の業績予想では、銀行株の評価損を織り込んでおらず、最終損失の見込みは40億円から130億円に拡大した。
銀行株価の事業会社への影響については、大和総研資本市場調査室の伊藤正晴氏が分析を試みている。2000年度の保有株データをもとに、今年3月20日の時価による推計によると、2988社の事業会社で、銀行株による評価損は3兆1010億円。業態別では大手銀が3兆0395億円だった。100億円以上の評価損となる企業は77社(500億円以上が6社、250〜500億円が20社)にのぼる。ただ、評価損となる会社のほとんど(2381社)は50億円までに収まると推計している。こうしたことなどを受け、伊藤氏は、「事業会社にとっての銀行株の保有リスクは事業会社全体の問題ではなく一部の企業の問題といえそうである」と指摘している。
ちなみに、大手銀行の株主構成(2001年9月30日現在)でみた場合、事業会社では、みずほ株で新日本製鉄<5401>、日立製作所<6501>、UFJではトヨタ自動車<7203>、帝人<3401>などが上位に名を連ねている。三井住友銀では昨年度末の旧住友銀、旧さくら銀の株主構成では、松下電器産業<6752>、トヨタ自動車などが大株主だった、という。
このうち、たとえば、新日鉄では、今年2月に公表した2002年3月期の業績予想には有価証券評価損の影響を織り込んでいない、という。セイコーのケースと同様、これまでの業績予想に織り込んでいない事業会社の場合、決算に大きな影響を及ぼす可能性も否定できない。
大手銀行株の評価損問題について、当の大手銀幹部は、「事業会社の株価も下がっており、お互い様ではないか。もちろん、(銀行の)株価は不本意で、反省すべき点はある」との声がある。一方、最悪期よりはマシ、との見方もある。ある大手生保関係者は、「2001年9月期末などに比べると、全体の期末株価は上昇している。その意味では胸をなでおろしている」という。