小売り最大手の米ウォルマート・ストアーズが4600万ドル(約60億円)で西友に6.1%の資本参加を果たし、いよいよ日本に進出することになったというのに、わたしに感銘はない。どういうことだろうか。
問題は合意の中身だ。それほど価値があるとは思えない。法律に触れなければ、かけてもいい。ウォルマートは2007年までに新たに20億ドル(約2600 億円)を投じて西友への出資比率を67%まで引き上げる権利も獲得したが、この権利を行使することはないとみている。
ウォルマートの時価総額はほぼ3000億ドル(約40兆円)だから、権利を行使したところでウォルマートにとって大した金額ではないし、西友との提携を支持する声が支配的なことも分かっている。ウォルマートは西友から日本企業の文化と哲学を学ぶだろう。当初の投資額を抑制したため、大きな間違いを犯す前に日本市場の現実を認識することになりそうだ。
ウォルマートと西友の文化の融合が最良かどうかは疑問の余地がある。また、ウォルマートが日本で学ぶ教訓に4600万ドルの価値があるとは思えない。金を出さなくても事実は分かる。欧米の小売業者はアジア市場では不適切な技術も同然だ。欧米の小売業者が極東で成功する余地は限られていると思う。
苦戦、撤退する外資系企業
会員制の小売店コストコ・ホールセールが幕張に店を開いて間もなく、店内を歩き回った私は、100個のトイレットペーパーやトマトケチャップが10缶入ったケースをいったいだれが買うのだろうと不思議に思った。これは規模の問題だ。 その日、コストコの客足は控えめだった。「控えめ」というのは小売業では失敗を意味する。コストコは日本で50店舗を開設する計画だったが、アナリストらによると、コストコは日本市場での見通しを縮小したようだ。
英ドラッグストア最大手のブーツとフランスの化粧品小売りのセフォラは日本に進出したものの、すでに撤退した。
わたしが幕張に出かけたとき、フランスのスーパーマーケット、カルフールは既に店を開いていたが、それ以降、日本での出店計画を下方修正している。日本の消費者は自分たちの生活にフランスらしい何かを求めたのであって、コストはそれほど大切ではなかったのだ。
神奈川県に任せよう
幕張のコストコに出かけたとき、中高年の男性で満員のバスが駐車場に止まっているのを見かけた。貸し切りバスで、神奈川県の役人や企業幹部がカルフール、コストコ、ミスターマックスといった売店を視察に来たところだった。彼らはそれぞれの店の案内図、略歴、店舗面積などの資料を持ち歩いていた。
結局のところ、日本の小売りは日本人に任せておけばいいのだ。日本の大規模小売店に未来があるとすれば、そのうちに神奈川県民が正しく導いてくれるに違いない。(パトリック・スミス)