世は「大倒産・失業時代」に突入寸前だ。今年2月は倒産企業件数が1712件となり、2月としては戦後最悪を記録。失業率も5.3%と前月と同じながら、完全失業者は約356万人に及び、高水準で推移する。ペイオフ解禁後は、連鎖倒産が数十万件に達するとの見方もあり、サラリーマンはどうサバイバルすればいいのか。
「会社の都合で辞めざるを得なくなったのは2度目だからね。正直、冗談じゃないって感じ」
40代の営業マンがこう吐き捨てるのも無理ない。
経営破綻(はたん)した大手証券会社から外資系証券の日本法人に転職したが、日本法人が大幅リストラを実施することになったのだ。
彼は悩んだ末、会社契約の人材派遣会社を通じ、再就職の斡旋(あっせん)も受けられる早期退職に応じる決断をした。妻子と自宅マンションのローンを抱え、「また同じくらいの年収(約1000万円)が確保できるのか心配」とつぶやく。
もっとも、自ら選択できる早期退職なら、まだましかもしれない。
帝国データバンクによる、最新の全国企業倒産集計では、2月の倒産件数は1712件(前年同月比約18.2%増)、負債総額1兆2713億円(同約14%増)となり、いずれも2月としては戦後最悪を記録しているのだ。
ペイオフ解禁以降、関係者からは「金融機関の破綻が引き金の連鎖倒産は、零細企業を含めると数十万件になる恐れもある」との声が漏れる。
住友生命総合研究所の霧島和孝主任研究員は、見通しを説明する。
「官民とも『改革断行の年』で、倒産企業も増えるなど痛みが伴う。大規模なリストラや賃下げやむなしの環境が整い、消費も停滞し続け、『大不況の年』になる。ただ夏以降は米国経済の回復も見込まれ、明るい兆しがないわけでもない。トータルでは支離滅裂な経済の新年度になり、日本経済や働く人にとって『転機の年』にもなる」
リストラや倒産による転機も含まれる。ゼネコン業界では、金融機関から借金棒引きを受けた企業を中心に、「次は○○だ」とささやかれる。流通業界や金融業界でもいつ不測の倒産劇があっても不思議ではない。
「500万人失業時代も視野に入った」とされるなか、企業戦士はどう生きればいいのか。
明治大学政経学部の高木勝教授は「『寄らば大樹』型の会社人間から、自己実現をどう図るのかが大事になる。倒産で失業しても路頭に迷わないように、特技やセールスポイントを磨き、自己研鑽(けんさん)を図るのが大切。大不況でもスペシャリティーのある人は再就職も有利。自分を見つめ直し、何を武器に生きるかを考え、厳しい環境を跳ね返すしかない」と話す。
それには何が必要か。都市生活研究所の西山昭彦社長は「自分の市場価値を知らないと、社内にいても、社外に出ても動きようがない。人材会社に登録し、自分がいくらもらえる人材かを確認すべきだ」と忠告する。
「企業の人材配分は2−6−2といわれる。リーダー的な人が上の2割で、普通の人が真ん中の6割、ぶら下がる人が残り。上の2割に入っていれば、会社が厳しくなってもリストラされにくいし、ヘッドハンティングもあり得る。6割の人は上の2割を目指すべきだ。安易に早期退職に応募すべきではない」
大倒産・失業時代のサバイバル術は結局、他人任せでなく、自身の価値を高める「個人武装」しかなさそうだ。