70年代から世界的な反捕鯨運動をリードしてきた国際環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)」の日本事務所(会員約3万7000人)が、条件付きで商業捕鯨再開を認める考えをまとめ、1日発行の会報に掲載する。国際本部にあたるWWFインターナショナル(スイス)も掲載を了承済みで、各国事務所を交えて同じ方向で意見を集約する作業を進めている。捕鯨をめぐる国際世論に影響を与えそうだ。
商業捕鯨は、82年に国際捕鯨委員会(IWC)総会でモラトリアム(一時停止)が採択された。だが近年、IWCは捕鯨国と反捕鯨国の政治的、感情的な対立の場に終始している。
会報に掲載される「WWFジャパンの方針と見解」は、数が多く絶滅の心配がない種類は、徹底した管理制度などの条件が整えば「商業捕鯨の再開が可能であるという論理を否定できない」と認めた。ただし、絶滅のおそれがある鯨の保護は不十分だと訴えている。文化や価値観の多様性を踏まえ、冷静に話し合う土俵作りを目指したいとしている。
日本の姿勢については、鯨の生態を調べる調査捕鯨を「科学的成果を出している」と評価する一方で、「政府は(捕鯨に関して)国際的に信頼されていない」と指摘している。
4〜5月には9年ぶりの国内開催となるIWC年次会合が山口県下関市である。有力な国際環境保護団体の「グリーンピース」は反捕鯨の姿勢を崩しておらず、米英豪など反捕鯨国の国内世論も固い。膠着(こうちゃく)状態は簡単には動かないとみられるが、WWFのメンバーは複数の国でIWCへの政府代表団に加わっており、打開の機運が生まれる可能性がある。(