事業会社(非金融機関)の含み損が急増している。大和総研が今月29日の株価をもとに約3000社の事業会社の含み損を試算したところ、総額は3兆5724億円と、半年前の5割増。この結果を反映した決算発表シーズンの5月は、「3月危機回避」などとはしゃいでいられる状況ではなくなる!?
含み損を増大させているのは電機、自動車、商社、流通など。大量保有する銀行株の急落がテキメンに影響した。含み損の増大により特別損失の計上を迫られ、運用難の穴埋めの期待がはずれたりと決算にも影響する。その結果、株が売り込まれれば悪循環にはまる危険すらある。これが5月危機説の一因ともなっている。
3月最後の営業日の日経平均が1万1000円台を保ったことなどから「3月危機は回避できた」と安堵する声が多いが、民間シンクタンクの研究員は「危機は去ったのではなく、表面化しなかっただけ。マグマは依然滞留し続けており、今後も噴火のタイミングは無数にある」と指摘する。
事業会社は今後、自己防衛のため保有銀行株の放出を強めるのは確実。民間シンクタンクの研究員も「銀行と事業会社の持ち合い解消は4月以降ますます増える」と指摘する。
その銀行に対する事業会社の不信感もやまない。メーカーの幹部は、銀行が含み損を減少させていることと対比させて、「税金を財源とする公的資金をおしいただいた銀行がぬくぬくと再生に道筋をつけている中、事業会社は損失拡大で泣かされる」と不満をぶちまけた。
銀行、事業会社の感情的な亀裂も生まれつつある中、持ち合い解消という売り合戦に、さらに外資も売り圧力を強める観測も飛び交う。地価も相変わらず下げ続けており、業績圧迫要因には事欠かない。日本経済は明るさを見いだせない中、疑心暗鬼の新年度を迎える。
ZAKZAK 2002/03/30