日本銀行の速水優総裁は28日午後、参院財政金融委員会で、「通貨及び金融の調節に関する報告書」の概要説明を行い、「景気は引き続き悪化傾向にあるが、このところ、景気の下げ止まりを展望し得るプラスの動きも見られ始めている」と述べた。
総裁は「本年に入り、米国をはじめ海外経済の回復に向けた動きがはっきりしてきており、わが国の輸出も下げ止まりつつある。国内でも在庫調整が一段と進んでおり、生産の減少テンポはかなり緩やかになってきている。このような情勢を踏まえると、今後、輸出や在庫面での下押し圧力が弱まるにつれて、景気の悪化テンポは次第に和らいでいくものとみられる」と指摘した。
総裁は一方で、「短期的な景気循環面から明るい材料が見られ始めているなかで、このところ日銀がとりわけ注意を払っているのが、金融資本市場の動向だ」と指摘。そのうえで「信用力の低い企業、とりわけ中小企業では資金調達環境が徐々に厳しさを増している」ほか、「2月後半には、短期金融市場においても、期末越えのターム物金利が強含むといった動きもみられた」と述べた。
今後ともデフレ脱却に向けて全力
総裁は「こうした動きが行き過ぎて、健全な企業の資金調達が厳しくなったり、金融市場が大きく不安定化すると、実体経済や物価をさらに下押しする恐れがある。このため、当面、金融面の動きには、細心の注意を払っていく必要がある」と表明した。
さらに、「日銀としては、今後とも、デフレ脱却に向けて、潤沢な資金供給を通じて市場の安定と緩和効果の浸透に全力を挙げていくこと、また、最後の貸し手としてシステミック・リスクの顕現化を回避することの両面において、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針だ」と述べた。