アルゼンチン政府が、最近のペソ急落を受け、ペソの変動相場制を放棄する可能性がある、という。変動相場制の導入後、同国経済は混迷の度合いが一層強まっている。この日も、首都ブエノスアイレスでは、主要道路などで失業者がタイヤを燃やすなどの抗議行動に出ている。
同国政府筋によると、ドゥアルデ大統領は、カレンシー・バンドの採用、あるいは年初に放棄した固定相場制に戻ることさえも検討している。
匿名を条件に同筋は、ドゥアルデ大統領が1月初旬にペソ切り下げを指示して以来、インフレ懸念からペソが68%も下落したことを受け、同大統領は制度の変更を余儀なくされる可能性がある、と述べた。
アルゼンチンペソは、22日と25日の2営業日に急落した後、26、27日には1米ドル=3.05ペソで安定推移した。
レメス・レニコフ経済財政相に近い当局者らは、大幅な制度変更の計画はない、と否定している。
しかし、小麦粉やガソリンなどの必需品の価格上昇はアルゼンチン国民の怒りを買っている。昨年12月に起きたスーパーマーケット略奪事件は27人の死者を出し、2人の大統領の辞任につながった。こうした事態の再発を避けるためには、ドゥアルデ大統領に残された選択肢はないかも知れない。
ある政府当局者は、「大統領は、レニコフ経済財政相のチーム以外からのアイデアを検討し始めた」と述べた。
政府筋によると、検討中のアイデアのひとつは、通貨バスケット制の採用。ペソを米ドル、ユーロ、ブラジルレアルの平均値にペッグさせるというもの。
もうひとつの選択肢は、ウルグアイが採用しているような、管理変動相場制の採用。ペソがあらかじめ設定された取引レンジから外れた場合に、中銀が介入するというもの。
同筋によると、ドゥアルデ大統領は、1月に放棄するまで10年間採用されていた、ペソ相場を1米ドル=1ペソに固定する”兌換(だかん)制”の新バージョンの採用も検討しているという。新たなペッグは、1米ドル=2.0〜2.5ペソに設定される可能性がある。