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マネー雑誌の特集になるなど、今大注目の株主優待制度。しかし、個人投資家に人気のソフトバンクの株主優待制度導入は子会社であるヤフーの株主利益が損なわれる可能性も！？
去る3月25日（月）をもって、わが国上場企業で最も多い3月
決算企業における2002年3月期における株主優待獲得合戦が終了しました。空売り規制の影響も若干あるのか、やはり直近まで株主優待が厚い運輸・空輸セクターなどの株価が上昇しました。
3月20日には個人投資家に依然高い人気を誇るソフトバンク（9984）も同社グループ企業が運営する「ヤフーBB」の月額費用2,830円を3ヶ月分無料とする株主優待制度の導入を公表しました。
金融機関との持ち合い解消、個人投資家層の拡大、株価対策、在庫対策等々、さまざまな要因により株主優待制度を導入する上場企業が増加していますが、株主が留意すべき点について少しみてみましょう。
■ 要注意！株主優待は課税される可能性がある？
上場企業の株主優待制度については以前も御紹介したように、上場企業の自社製品などの無料や割引サービス等のほか、上場企業の事業内容に全く無関係な商品券や米の提供まで多岐にわたります。
この株主優待は、上場企業の資産から株主に対して製品やサービスなどの経済的価値が流出するという意味において株主配当と同様の経済効果があるといえます。しかし、上場企業における利益分配としての株主配当とは異なり、自社製品やサービスを株主によく知ってもらうといったIR活動の一環として、また、個人株主の安定化策といった観点から、株主優待は利益の出ていない赤字企業等においても実施されているという点に特徴があり、実際に配当所得には含まれず配当課税は非課税とされています。
しかし、専門家にもよく誤解されますが、この株主優待は全くの非課税ではなく実は雑所得として課税される場合がある点に注意が必要です。雑所得には例えばサラリーマンの給与以外の雑誌への原稿料や外貨預金の為替差益等が該当しますが、これらの金額と株主優待の合計金額が20万円を超える場合は申告する必要が出てくるのです。
■ 海外市場における株式公開を検討する上場企業は株主優待の廃止可能性が高い？
海外では企業による利益の還元は原則として配当所得として課税されるため、仮にわが国の株主優待のようなサービスを行えば配当所得として課税されます。また、海外では株主間の利益が不公平（1,000株保有している株主と100,000株保有している株主が同じ株主優待を受けるという不公平）になる可能性があるため、ほとんどの場合は株主優待制度を導入していません（但し、株主パーティや株主優待セールなどを行う上場企業はあるようです）。
最近、海外における知名度向上や資金調達手段の拡大を目的にニューヨーク証券取引所など海外市場での株式公開を検討している上場企業が増えてきていますが、そのような上場企業については株主優待における地域限定性の問題や上述の株主間の不公平から株主優待制度そのものの廃止を検討する可能性が高く、株主優待に魅力を感じて保有している方にとっては注意が必要です。
■ ソフトバンク子会社のヤフー株主の株主優待は？
冒頭でソフトバンクにおける株主優待制度の導入を紹介しましたが、子会社であるヤフーを保有する方は利益が損なわれる可能性がある点で注意が必要です。
株主優待対象のヤフーBB事業はソフトバンクの出資が過半数を占めますが、子会社の上場企業であるヤフー（4689）も出資しています。ヤフーBBにおける株主の3ヶ月分の費用についてソフトバンクが正規料金でもつのであれば全く問題ないのですが、仮にグループ会社ということで著しく低い水準まで値下げ（又は無料化）してもつのであれば、ヤフー株主の出資分の利益が損なわれる事態になるためです。
6月中旬以降、3月決算企業の株主総会が開催されますが、株主配当や自社株取得の議案に記載されている事項だけではなく、以上の留意点を踏まえ株主優待の必要性や内容について議論される必要があるのではないかと思われます。
阿波一行
提供：株式会社ＦＰ総研
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。