欧州連合(EU)は27日、鉄鋼製品に対する米ブッシュ政権の緊急輸入制限(セーフガード)発動に対抗し、数量枠を超えた熱延鋼板などの関税を最大26%まで上乗せする暫定的な輸入制限を決めた。28日から実施し、半年後に見直す。米欧の「輸入制限合戦」は世界の自由貿易体制を揺るがす恐れがある。
プロディ欧州委員長は記者会見し、「欧州の産業と労働者を守るためだ。米国が保護主義の道に踏み込まないよう、ブッシュ大統領に訴えたい」と語った。EUは(1)98年からEUの鉄鋼輸入は18%増加(2)米国の発動で最大1500万トンの鉄鋼製品が欧州市場に向かう――とし、今回の措置は世界貿易機関(WTO)のルールに沿ったものと強調している。
EUは、製品ごとに計570万トンの輸入枠を設け、それを超えた分に14.9〜26%の上乗せ関税をかける。米国が対象とした14品目はEUの分類では21品目にあたり、うち15品目が制限対象。輸入量が少ない途上国や、貿易量を事前に合意しているロシアやウクライナには適用しない。
EUは今月7日に米国をWTOに提訴、欧州の鉄鋼業界が被る損失の補償として20億ドル以上を要求した。認められない場合は、米国の繊維製品やかんきつ類などにも制裁関税を課すことを検討している。今回の暫定セーフガードで日本や韓国などの対欧輸出に影響が出れば、WTOでの日欧連携にも響きそうだ。