今年度末の大手12行の不良債権残高が、24兆円を上回る規模となることが明らかとなった。平成13年9月末時点に比べ約4兆円の増加。大手行からは「処理しても処理してもキリがない」(大手都銀関係者)との嘆きすら聞こえる。来週4月1日には、日本興行、第一勧業、富士の3行の統合・再編で2つの銀行が誕生する。収益性重視を目指すが、“ドロ沼”状態の中、ぬかるみに足をとられる懸念はつきまとうばかりだ。
昨年3月末時点の大手12行の不良債権残高は、17兆6800億円。デフレ不況が長引く中、27日付日経新聞によると、3月末の残高は24兆円を超える規模になる見通しとなった。この1年で実に6兆円以上、4割弱も増加したことになるだけでなく、半年前に比べても2割強の増加だ。
バブル経済崩壊以後、ずっと続いている銀行の不良債権問題。構造改革を掲げる小泉政権は、3年以内の不良債権問題正常化を示し、これを受け金融庁では昨年秋から大手行の大口融資先の特別検査を行っている。
特別検査を受け銀行側は、「要注意先」に分類していた貸出債権の査定を厳格化、経営内容の悪いものについては「破綻懸念先」など不良債権へと査定し直してきた。デフレ不況の中、企業の経営内容は悪化一途をたどっており、昨年9月末時点の不良債権残高は20兆1400億円。それが、この特別検査などを受けさらに約4兆円増加する見通しとなった。
銀行側は、ゼネコン、流通、不動産など、多額の有利子負債を抱える不振企業について、会社更生法などの法的整理や、債権放棄など整理を促進し、不良債権の処理を進めている。
大手12行は今期中に不良債権処を、約7兆5000億円処理する方針。昨年9月中間決算発表時点では6兆5000億円と見込んでいたが、約1兆円上積みする。貸し倒れ引当金を大幅に積み増すほか、債権放棄など不振企業支援を前倒しで実施するためだ。
こうした不良債権処理の増加は、一方では銀行の経営体力を確実に奪う。貸し倒れ引当金の大幅積み増しは、不良債権処理損失として、損失に計上される。
また、大手行の本業のもうけ(業務純益)は4兆円足らずであり、これを上回る処理を行うため、資本の一部である剰余金の取り崩しも余儀なくされている。また、時価会計の導入で株価下落により発生した保有株式の含み損も、その6割を剰余金から差し引かねばならない。
最近の株価回復を受け、下火となっているが、銀行の抱える問題は何ら変わっていないのが実情なのだ。
「銀行は構造不況業種。これまでのように利ザヤで稼ぐのではなく、もうかる仕組みに変えなければ」。大手都銀関係者はこう指摘する。処理を上回るスピードで不良債権が増えつづけている今、抜本策は結局、「銀行側が不良債権発生を上回る収益を上げるしかない」(同)というわけだ。
「現在はオーバーバンキング状態。融資先の再編、淘汰を行うだけでなく、銀行側も淘汰が必要」(金融アナリスト)との指摘もある。
来月4月1日には、日本興行、第一勧業、富士の3行が統合、再編し、中小企業などを顧客とする「みずほ」、大企業を対象の「みずほコーポレート」の2銀行が誕生する。それぞれ総資産約70兆円以上を持つ巨大銀行で、外資に対抗できる高い専門性、収益力を兼ね備えたビジネスモデルを模索する。
しかし、「みずほ」の看板を掲げる店舗が重複するなどの事態が当面は続き、今後の店舗削減加速は避けられない。4年間で120店の削減を目指すが、こちらもコストがかかる。収益体質にたどりつくまでの道も険しいといえそうだ。