「ダイエーと取引している銀行には、“主力取引3行”とは別に、“ウラ主力取引3行”というものが存在する。そしてこの“ウラ主力取引3行”がいまや、ダイエーにとって鬼っ子的な存在となりつつあるのです…」
経営再建計画の発表からちょうど1カ月が過ぎたダイエーだが、同社の主力取引3行の役員がこう言ってみせる。
このコメントに登場する“主力取引3行”が、UFJ銀行、富士銀行、三井住友銀行の3銀行を指すことは改めて説明するまでもないだろう。
それでは、“ウラ主力取引3行”とはいったいどの銀行のことを指すのであろうか。
「この“ウラ主力取引3行”とは、その本店の所在地から“福岡3行”とも呼ばれており、福岡シティ銀行(本店・福岡市)、西日本銀行(同)、福岡銀行(同)のことを指すのです」(前述の主力取引3行役員)
それではなぜ、この3地銀が、“鬼っ子”的な存在となっているのだろうか。
「そもそも、ダイエーが抱える“福岡3事業”だけに限定するならば、“福岡3行”の与信残高が主力取引3行のそれを大きく上回っていることに注目すべきでしょう。ダイエー−特に“福岡3事業”の今後の推移しだいでは、この“福岡3行”に大きな影響を与えることになるのは必至の情勢でしょう」(主力取引3行役員)
ここで言う“福岡3事業”とは、ドーム球場、ホテル、福岡ダイエーホークスのことを指すことは言うまでもない。
「その“福岡3事業”が抱える有利子負債は、トータルで約1600億円に達しています。これに対して“福岡3事業”が保有する資産は、簿価ベースで1300億円、時価ベースでマックス1000億円にすぎないのです。つまり最低でも600億円の債務超過に陥っているのです」(主力取引3行役員)
こうした状況を受けてダイエーサイドは、ドーム球場とホテルに関して証券化した上で売却する方針を固め、このプランを正式に発表していたのである。
「ところが、“福岡3行”とそれに連動する高塚ダイエーホークス副社長−中内正ダイエーホークスオーナーのラインが猛反発したことで、この“売却プラン”が実質的に空中分解してしまったのです」(主力取引3行幹部)
そもそもダイエーサイドは、1カ月前に発表した経営再建計画(3カ年計画)の中で、計画の最終年度となる2004年度中にドーム球場とホテルの売却を行うことを明らかにしていた。
高木邦夫社長は、外資系投資銀行に協力を仰ぐ形でドーム球場とホテルの“証券化”の実現に向けて動いていた、と言っていいだろう。
「ところが、“福岡3行”−高塚−正ラインがその計画に反発したことで、計画策定からわずか1カ月足らずで売却案は白紙撤回されてしまったことになります。ダイエーおよび主力取引3行にとって、福岡事業は完全にアンタッチャブルな存在になってしまった、と言っていいでしょう。それと同時に、高木社長すらも当事者能力を失ってしまったのです」(主力取引3行幹部)
それではなぜ“福岡3行”は、売却案に難色を示したのであろうか。
「ドーム球場とホテルを売却することで、融資の損失が一気に表面化してしまうからでしょう。“福岡3行”には、それに耐えられるだけの体力がないのです。場合によっては、“福岡3行”の経営が重大な局面を迎えることにもなりかねません」(主力取引3行役員)
いずれにしても、“福岡3事業”の今後の展開には要注目だ。
2002/3/27