東京証券取引所(東証)は、5月からマザーズ銘柄の上場廃止基準を厳しくする。
売上高や時価総額に最低基準を設け、クリアできない企業を退出させる仕組みだ。容易な株式公開の構造はベンチャー企業の育成に寄与する一方で、企業経営のモラル欠如をも露呈させる側面を持ち、株式マーケットそのもののイメージダウンにつながりかねない。東証の土田正顕社長は「上場企業に緊張感を持ってやってもらいたい」と話しており、市場の信頼を失った企業は追い出す姿勢を明確に打ち出す考えだ。
●売上高と時価総額にハードル設定
新基準では、赤字企業は年間1億円以上の売上高が必要と定めている。また、時価総額で5億円を割り込むと、最短で3カ月以内に上場廃止となる。
上場36銘柄のうち時価総額5億円割れはないが、音楽配信を手掛けるサイバー・ミュージック・エンタテインメント<4740>(旧リキッドオーディオジャパン)、と漫画専門古書店のまんだらけ<2652>の2社が10億円を割り込み、黄色信号が灯っている。
売上高基準でみると、サイバーミュージックがここでも引っ掛かる。同社は2002年6月期で1億円の売上高と赤字決算を予想している。売上高と時価総額からみる限り、上場維持は危険水域に入りつつあると言えそうだ。
基準を満たさなかった企業は3カ月以内に、東証に改善計画書を提出・公表すれば9カ月の猶予期間が生まれる。それまでに株価を上げるか、業績を黒字化させなければ、上場の廃止が決まってしまう。
●問題企業フリーパスの後始末
「反社会的勢力との関係」、「経営陣の内紛等」―。東証が社長会見の際、マザーズで起きた「さまざまな問題」として指摘した事柄だ。こうした問題の結果「イメージの低下」と「一般の不信感が高まる」といった悪影響があったことを認めている。
サイバーミュージックは旧リキッド時代の社長が逮捕されたほか、新聞では報道されない多種多様な噂が今も流れている。このほか、内紛から若手社長が追い出された企業では、株券が暴力団に流出したともいわれるなど、マザーズは上場企業数が少ないわりに不祥事が目立っている。
●結局、店頭市場が高評価
新興企業向け市場は、マザーズのほか、店頭(ジャスダック)市場、大証ナスダック・ジャパンの3市場が並立している。ナスダック・ジャパンは低迷が続き、「撤退しか道はない。大証の巽悟朗社長らのメンツをいかに立てるか―だけの問題」(業界団体筋)という。マザーズもコスト意識の希薄な東証だからこそ継続している市場だ。
国内証券の中小型株アナリストは指摘する―「結局、店頭上場→東証2部→東証1部という“表街道”を歩めない企業を上場させること自体に無理がある」。「上場が企業の最終目標だ」などと言われた時代はとうの昔に終わりを告げているようだ。