西友<8268>とウォルマートの資本提携は、後方支援する大手総合商社の住友商事<8053>と三井物産<8031>の思惑や焦りも浮き彫りになった。住友商事は3年前に86億円を投じて11.8%の西友株を握り、筆頭株主となったものの、これまで具体的な大型提携案件がなく、西友株も低迷したため、投資に見合う果実がない状態だった。同社は当初からコンビニには食指を動かしておらず、傘下の食品スーパー、サミットそれにマミーマート<9823>ともども、食品スーパーに力を入れる西友との連合体を作る構想を持っていた。ところが、各社の思惑もあってこうした点の戦略がなかなか面の展開にならない。
●西友とヨーカ堂の“接点”
今回のウォルマートとの資本提携も「西友とウォルマートとは志向するものが違う。西友は食品スーパーだが、ウォルマートはあくまでディスカウント業態。西友としては財務的に疲弊していたから資金を注入するという大きな眼目があったわけだが、基本的には両社は同床異夢で組むことにそれほどのメリットがあるとは思えない」(流通関係者)と言われ、両社の接着剤として住友商事が強く動いたことが大きい。住友商事としては商権拡大が必須だったからだ。
住友商事の資本傘下を仰いだ時点で西友はセゾングループから離脱しており、どの相手ともしがらみなく組めるフリーハンドを得た。セブン―イレブン・ジャパン<8183>と競合するファミリーマート<8028>も、すでに伊藤忠商事<8001>の手に渡っている。また、イトーヨーカ堂<8264>では系列出版社が「Saita」という生活情報誌を発行しているが、西友グループのSSコミュニケーションズが発行していた同様の生活情報誌「レタスクラブ」も、すでに角川書店<9477>の手に渡っている。
さらに、ヨーカ堂グループの代表でセブン―イレブンの鈴木敏文会長は過去、西友のセミナーの講師として呼ばれたことがある。こうしてみるとヨーカ堂と西友の親和性はかなり高いということになる。
●銀行を軸に接近?
そこで、ヨーカ堂絡みで浮上してくるのが三井物産である。同社は当初、マイカルとの関係が深かったがマイカルはすでに破綻、いまではセブン―イレブンを軸にヨーカ堂グループとの連帯を鮮明にし「ヨーカ堂グループとの取扱高を将来、1兆円に引き上げたい」と鼻息も荒い。が、三井物産では「商社が直接小売業を手掛けるのは無理。うちはあくまで後方支援に徹する」として、ローソン<2651>を買収したライバルの三菱商事<8058>、あるいはファミリーマートを傘下におさめた伊藤忠商事とは一線を画している。
これは半分正論、半分は三井物産のエクスキューズといっていい。というのは、ヨーカ堂グループは、セブン―イレブンもヨーカ堂も財務体質が抜群で、三井物産が資本参加する余地はない。しかもヨーカ堂グループは取引先に対して厳しい条件で臨むことでも有名で、三井物産としては規模を拡大しないことには、収益を上げることは並大抵ではないからだ。
ただ、ヨーカ堂は創業者の伊藤雅俊名誉会長と旧三井銀行との関係が深かった縁もあり、過去、三井物産から役員を送り込んだ例もある。そこで気になるのが三井住友銀行<8318>を軸にした両財閥の接近だ。商社界ではメリットがないとして、いまのところ住友商事と三井物産が合併、または経営統合する気配はないが、両社は西友―ヨーカ堂の接点をはかって結託する可能性を秘めている。住友商事にとっても三井物産にとってもメリットが大きい。その行方いかんでは、大合同へ進む可能性を秘めている。
(吉野 経)