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インフレ到来への備えも忘れずに・小塩隆士氏   日経マネー&マーケット 投稿者 招き猫 日時 2002 年 3 月 23 日 22:28:38:


 政府は2月27日に総合デフレ対策を発表した。日銀も翌28日、追加的な量的緩和策を打ち出している。こうした政府・日銀の対応に対しては、デフレ対策としては手ぬるいという見方が一般的である。とりわけ日銀に対しては、物価上昇率に数値目標を設けて政策運営するインフレターゲットの導入を求める意見がますます強まっている。(小塩隆士・東京学芸大学助教授)
 デフレ的状況の下でインフレターゲットを提唱することは、いくら学者が理屈を並べようが、実際には「調整インフレ策」である。しかし、本稿の目的はインフレターゲット批判ではない。むしろインフレ到来に備えよ、というのがここで言いたいことである。

マネーとインフレの関係は明確でない

 インフレを起こすためには、日銀がベースマネー(現金と日銀当座預金の合計)を増やせばよいというのが普通の発想であろう。しかし、マネーとインフレの関係はそれほど明確ではない。

 潜在成長率を上回るペースで景気が拡大したバブル期を、ここで振り返ってみよう。この時期、日銀は過剰流動性を放置していたが、ベースマネーの拡大とほぼ歩調を合わせる形でマネーサプライ(通貨供給量)が拡大している。しかし、物価は驚くほど安定していた。だからこそ日銀は引き締めのタイミングを逃したとも言える。

 マネー拡大にもかかわらず物価が安定していたのは、マネーが土地や株式などの資産に向かったからである。地価や株価などストックベースの価格が上昇するだけで、消費者物価や卸売物価などフローベースの目立ったインフレは発生しなかった。

実体経済に及ばない金融緩和効果

 次に、超低金利政策から最近の量的緩和に至るまで、日銀がベースマネーを再び大幅に増やしてきたここ数年はどうか。マネーサプライの増加は、順調とはいえない。日銀が資金を大量に供給しても、民間銀行がそれを貸し出しに回さず、むしろ貸し出しを削減してまで国債の購入に回してきたからである。民間銀行が国債を購入してもマネーサプライは増えるはずだが、貸し出しを減らしているのだから大きな効果は出てこない。

 要するに、量的緩和は「空回り」してきた。金融緩和の効果は、実体経済や物価にまで及んでいない。バブル期にマネーがストック経済の内部でぐるぐる回り続け、フローベースのインフレにつながらなかったのと同様に、最近のマネーは国債購入に向かうだけで、フローベースのインフレと完全に縁が切れている。

不良債権処理加速がインフレの端緒に

 マネーとインフレが乖離(かいり)しているのは、巨額の不良債権を背景として、銀行、企業がいずれも過度のリスク回避姿勢をとっているからである。だから、マネーはインフレにつながるところにまで到達していない。もちろん、マイナスのインフレ率の原因としては、モノやサービスの需給ギャップ拡大や輸入浸透度の高まりも挙げることができる。しかし、量的緩和とデフレの同時進行はそうしたフローベースの状況だけでは説明できない。

 今後についてはどうか。2つのシナリオが考えられる。第1は、金融庁の政策が奏功して不良債権の処理が加速し、人々のリスク回避姿勢が軽減される場合である。最近の長期金利の上昇傾向に見られるように、国債の値崩れ懸念がすでに高まりつつある。銀行は、大量に抱え込んだ国債を貸し出しに仕向けるであろう。

 これまでの量的緩和の効果は、ここに来て一気に現実のものとなる。国債相場の下落(長期金利の上昇)とインフレ進行がセットで発生する。まさしく、積み上がった薪(まき)に火がつくわけである。

円安傾向の定着でインフレの進行も

 しかし、不良債権の処理は徐々にしか進まないかもしれない。その場合のインフレシナリオはどうなるか。人々のリスク回避姿勢は急速には変化しないから、貸し出しもそれほど増えない。まして、リスクの高い株式市場にマネーは向かわないだろう。ところが、銀行の国債保有にも限界が見え始めてきた。

 そこでマネーの有力な行き先は海外となる。もちろん為替リスクがあるが、円安傾向が定着すれば為替リスクは十分カバーできると考える投資家が増えてくる。したがって、円安を通じたインフレ進行という第2のインフレシナリオが描ける。

 昨年秋以降における政府・日銀の円安容認姿勢が示唆するように、このシナリオが政策的に選択される可能性は低くない。ただし、ここでも国債は値崩れするので、日銀はさらなる長期国債の買い入れ増額を要請される。

蓄積されるインフレ再燃のエネルギー

 いずれのシナリオもどこまで現実的か不透明だが、ぜい弱な実体経済だけを見て、いつまでもデフレが続くと想定することは危険である。不況とインフレが両立していた例は、過去にいくらでもある。これまでマネーとインフレ率との間にほとんど相関がなかった裏側では、途方もないインフレ再燃のエネルギーが蓄積しているのかもしれない。

 インフレターゲット論者のねらいが、「日銀はハイパーインフレ回避のためにインフレ目標を設定すべし」という点にあるとしたら、筆者はそれに全面的に賛成する。


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