政府の経済財政諮問会議が月末に公表する税制抜本改革の論点の骨子が明らかになった。2003年度以降に3段階の実行計画(改革工程表)を設定。当初2年程度は贈与税軽減など経済活性化につながる減税を先行させる。財源は歳出削減や国有財産の売却でねん出、国債増発に依存しない。減税先行を前提に予算編成作業を進めることで、歳出の効率化による構造改革を推進する狙いもある。
論点の骨子は改革の基本理念を納税者が「広く薄く」負担する簡素な税制と規定。経済活性化に軸足を置きながら、その延長線上に財政健全化を位置づける。税制を歳出見直しと一体で検討する考え方も提示。税制だけを個別に取り出して議論していたこれまでの政策展開と一線を画す。
抜本改革のスケジュールとなる「工程表」は諮問会議が1月にまとめた中期経済財政展望と連動。2010年代初頭までを見据え、税制改革を「活性化」「制度の抜本改革」「財政改革」の3段階に分けて進める考えを示す。
具体的には2003年度から2年程度は日本経済の集中調整期間とし、個人や企業の活力を引き出す活性化減税を先行させる。金融資産が高齢者層に偏っている現状を踏まえ、住宅取得資金などの生前贈与にかかる贈与税の非課税枠を拡大、勤労世代への資産移転を促すことなどが柱。
企業の研究開発投資や証券市場の活性化につながる税優遇の拡充なども盛り込む。減税項目の一部は2002年度中の実施へと繰り上げる可能性もある。減税財源は歳出削減や国有財産の売却などで賄う。歳出効率化で生まれた財源を減税に回せば構造改革への理解が深まるとみている。
改革の中盤では所得税がかかる最低年収を示す課税最低限の引き下げなど、税体系の整理・簡素化に取り組む。所得・法人・相続税などで課税範囲を広げる一方、所得が増えるほど税率が高くなる税率の累進構造をなだらかにし、「努力が報われる」税制の基盤を固める。金融所得をひとまとめにし、給与所得などと切り離して税率を引き下げる「二元的所得税」も導入する。長期的には財政健全化の観点から社会保障制度改革と連動して消費税率引き上げなどを検討する。
諮問会議は4月以降、今回の論点整理を踏まえて具体論を詰める。6月に税制改革の基本方針をまとめ、2003年度の予算編成や税制改正作業に反映させる。抜本改革論議を並行して進める政府税制調査会(首相の諮問機関)には減税先行に否定的な意見も多く、6月までに政府内で方針を統一する必要がある。
税制改正の決定権を事実上握る自民党税制調査会は6月以降、個別の改正項目が出てきた時点で本格的な議論に入る見通しだ。