日本の株式市場は、株価指数やディバティブの上場以来、内外の金融技術の差などのため外国人に要所要所で主導権を握られてきた。一九九〇年初頭の現物と先物のスパイラル的なアービトラージ、九七年から九八年の格付け機関の活躍、昨年春以降の一部アナリストの試算により急増した不良債権額など、市場参加者はこうした動きに必ずしも同意できないまま追従せざるを得なかった。
特に最近は外国人投資家の売買シェアが五〇%を超え、値動きだけに注目するインターネット・ディトレーダーが増えていることから、株式市場は一部外国人投資家の意向を色濃く反映しやすい状況が続いていた。しかし、単なるアービトラージやアナリストらの意見だけで株価から乖離(かいり)していくはずがない。今回摘発されたような様々な不正が同時に行われていたのである。
かねて、市場関係者の間ではこうした不正が指摘されていたが、不正摘発は現実は困難であるとのあきらめが支配的だった。従って、今回一気に四社が不正行為を摘発され処分されたことは大変な驚きであった。カラ売りだけではない様々な不正に対して、今後も内外の差別なく当局が厳しい対応をするならば、「世論や株式市場」は九〇年以降十二年間続いた「外国人の呪縛」からようやく解き放たれることになる。
正常化しつつある株価と世界的な景気回復により、日本はバブル崩壊後の転換点を迎えている。今回のカラ売りルール順守を、単なる三月末までの株式対策にしてはならない。
[日経産業 3/14 「Equity」 ](風信器)
★コメント
日経級の記事の読み方としては、新聞ブランドとしての論理や主張の一貫性を期待するよりは、
その都度、読み手が判断するほうが平和でしょうね…