会計基準の世界統合を進める国際会計基準(IAS)理事会がこのほど公開した二〇〇一年の年次報告書(要約版)に欧米株式市場の関係者が不満を漏らした。基準理への資金拠出者リストで、五法人・組織の名が伏せられたからだ。米エンロンも会計基準作りに影響力を持つため資金提供を検討していただけに、「基準理自身がお金に関して透明性を高めるべきだ」(欧州系証券の会計アナリスト)との声が上がっている。
基準理の活動は、全世界の企業や中央銀行などが出す資金で賄われる。昨年は百八十八の提供者から計千八百三十万ドル(約二十四億円)が集まった。事業会社・金融機関が総額の五六%を占めたほか、五大会計事務所が三〇%、中央銀と政府系機関が七%をそれぞれ拠出した。
米ゼネラル・エレクトリック、英BP、独アリアンツ……。事業会社リストには一流企業の名前がずらりと並び、基準理の影響力の大きさを見せつけた。ただ、「先方が実名を伏せたかった」との理由で計二十二万ドルの拠出者が明らかにされなかった。そこで、リスト公表に期待していた関係者は肩透かしをくらった。
話は二月中旬に戻る。
基準理の予算責任者を務めるポール・ボルガー前米連邦準備理事会(FRB)議長がエンロンに対し、資金拠出を要請していたことが米英メディアの報道で明らかになった。
エンロン側も、「基準理幹部に接触できる」との条件付きで前向きに検討した。
折しも、会計不信が市場全体を覆っていた時期だけに、「エンロンは米基準だけでなく、IASも悪用する意図を持っていたのか」と市場に緊張感が走った。拠出者リストは、エンロンの社名の有無を確認するために重要な情報だった。
基準理によれば、「エンロンはお金を出していない」(コマーシャル・ディレクターのカート・ラミン氏)という。それだけに、実名の公表を拒む一部の拠出者を巡っては疑心暗鬼が募っている。
「市場の不信をぬぐうには、正しい会計基準を作るだけでは不充分。基準作りの過程が厳密だと信用されなければならない」。基準理の内部では今、こんな議論が進んでいるという。
(ロンドン=小平龍四郎)
★コメント
なぜ隠す?「日本の主張が云々…」も、所詮はこの程度の次元だった、ってことか??