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多額の不良債権処理を迫られている大手１２行の１４年３月期決算が、連結ベースで最終赤字に転落する見通しとなった。金融庁による大口融資先への特別検査強化を受け、不良債権処理を１兆円以上積み増すためだ。９月中間決算発表時に黒字見通しとしていた東京三菱＝写真＝など３行も、赤字転落を余儀なくされる。関係者は最近の株価回復で、「金融システム不安に端を発する３月危機は去った」と一息ついているが、その実態は、「危機」以外のなにものでもない。
昨年１１月の９月中間決算発表時点で、大手各行が予想していた今年度の不良債権処理額は計約６兆５０００億円。その後、金融庁による特別検査強化を受け、不振企業への貸し倒れ引当金などを積み増した結果、不良債権処理額は約７兆５０００億円を超す規模にまで膨らむ見通しとなった。
毎日新聞などによると、この結果、大手銀行１２行すべてが連結最終赤字に転落し、赤字総額は２兆５０００億円を上回るとみられる。
公的資金の注入を受けていない、三菱東京グループの東京三菱、三菱信託も例外ではない。グループの不良債権処理額を４８００億円から６０００億円超に積み増す方針で、この結果２００億円の黒字見通しから、赤字に転落する公算が大きくなった。
さらに、住友信託も、不良債権処理額を当初予定の８００億円から積み増し、最終損益は２２０億円の黒字から赤字に転落する方向だ。
このほか、富士、興銀、第一勧銀のみずほグループ３行のほか、三井住友、ＵＦＪ（三和、東海）、大和、あさひなど大手各行は９月中間期で既に赤字転落を予想。このうち三井住友は、不良債権処理の積み増しを検討しており、最終赤字が予想の１５００億円より拡大するとみられる。また、みずほなど他の大手行も、これに追随しそうな気配となっている。
大手各行が不良債権処理を積み増しているのは、来月１日のペイオフ解禁を前に、銀行の財務体質を健全化しておきたいという金融庁の強い意向がある。政府が２月末に発表した総合デフレ対策でも、大口融資先への特別検査厳正化を示し、過剰債務企業の早期処理を促してきた。
実際、準大手ゼネコンの佐藤工業などが法的整理され、ダイエーを始め、その他の問題企業も債権放棄という形で一応の決着はついた。
ただ、これですべての問題が解決したわけではない。
大手行関係者は「不良債権処理には一応のめどがついた。それでもまだ自己資本比率は１０％を維持しており、公的資金注入は必要ない」というが、金融アナリストの１人は、「ＵＦＪ、三井住友などは虎の子の資本準備金を取り崩さねばならず、大手行の体力はすでにかつかつの状態。ダイエーなど債権放棄組は処理先送りに過ぎず、再度問題として浮上する可能性が大」と警告。さらに、「公的資金注入は不可欠。政府の“官製相場”で危機が去ったように見えているに過ぎない」（大手証券）との声も強い。
柳沢伯夫金融担当相は、「銀行の体制は整備された」と安全宣言を行ったが、根本的な問題は何も解決されていないようだ。
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