国内債券市場で、個人投資家を販売対象とする外貨建て債が発行ラッシュとなっている。4月からのペイオフ解禁や昨年末からマイカルやエンロンなどが発行している社債が、債務不履行(デフォルト)となったことで、格付けが「AA」格以上と、信用力が高い外債が人気を呼んでいる。円安基調もあって、低金利に悩む個人投資家が、格付けが高い外債を積極的に購入している。
野村証、日興コーデ、国際、つばさなどが攻勢
外貨建て債の発行に積極的なのは、野村証券、日興コーディアル証券、国際証券、つばさ証券、新光証券など。通貨では、米ドル、ユーロ、豪ドルが多い。表面利率は3年債を例にとると、米ドルで3.7%程度、ユーロで3.8%程度、豪ドルで5.3%程度となっている。
野村証が20日から売り出した豪ドル建て債は、発行体が欧州投資銀行で、発行額も8億8000万豪ドル(約600億円)で、過去最大規模、表面利率は5.25%。野村証の営業企画部担当者は、格付けが良く、利回りも高いことが好感されて販売は順調、という。
現在、世界銀行のドル建て、ユーロ建て債を売出している日興コーディアル証券でも、売れ行きは良く、売出し期限の25日を待たずに完売している営業店も出ている。
「トヨタ」と「米ドル」は最強の組み合わせ
これらの外債を発行している発行体は、世界銀行、欧州投資銀行、米州開発銀行など「AAA」と最上級の格付けを取得しており、投資家は信用リスクをそれほど気にせずに投資することができる。
その他にも、フランス電力公社、オランダ自治体金融公庫、ドイツ農林金融公庫など外国の政府系機関も日本の個人向けに外貨建て債を売出しているが、格付けはいずれも最上級だ。
日系の発行体で特に目を引いたのは、トヨタの金融子会社、トヨタ・モーター・クレジットが発行したドル債だ。当初の発行予定額は1億米ドルだったのが、最終的に確定したのは、4億5500万ドルと大幅な増額発行となって起債関係者を驚かせた。
日系銘柄では世界的な知名度を誇るトヨタ。格付けも日本国債を上回る「トヨタブランド」と基軸通貨「米ドル」は、投資家にとって、「最強の組み合わせ」なのかも知れない。
米ドル―機軸通貨、豪ドル―高金利、ユーロ―期待
売出されている外債の通貨としては、米ドル、ユーロ、豪ドルが多い。米国同時多発テロ事件という悲劇が米国を襲ったものの、米ドルへの信任は依然として厚く、趨勢的な円安傾向が続いている。
豪ドルと言えば、高金利通貨の代表格。金利水準が10%程度もあったころと比べると低下しているものの、米ドルやユーロ建ての金利よりは高い水準を維持している。ITバブルが崩壊した現在、資源国のオーストラリアに注目する投資家も多い。
特に、野村証券は、豪ドル債売出しのパイオニアで、最近でも、世界銀行(8億1500万豪ドル)、欧州復興開発銀行(7億5000万豪ドル)、ヴィクトリア州(8億豪ドル)などが発行した大型の豪ドル債を販売している。
●3月以降、売出された個人向け外債
発行体 発行額(百万) 通貨 利率 年限・野村 欧州投資銀行 880 豪ドル 5.25% 3年・日興コーデ 世界銀行 80 米ドル 3.76% 3年・日興コーデ 世界銀行 30 ユーロ 3.82% 3年・国際 米州開発銀行 45 ユーロ 3.79% 3年・国際 米州開発銀行 35 米ドル 3.62% 3年・つばさ オランダ自治体公庫 41 米ドル 3.75% 3年・つばさ オランダ自治体公庫 27 豪ドル 5.3% 3年・新光 フランス電力公社 90 米ドル 4.54% 4年4カ月・新光 フランス電力公社 11 ユーロ 4.4% 4年4カ月・新光 フランス電力公社 125 豪ドル 5.76% 4年4カ月