(回答先: 米政府の鉄鋼セーフガード、20日発動=日本は直ちにWTO提訴へ【ワシントン19日時事】 投稿者 sanetomi 日時 2002 年 3 月 19 日 17:42:21)
ブッシュ米大統領が発表した鉄鋼製品への緊急輸入制限(セーフガード)に米国内外で批判が強まっている。今回の措置がブッシュ政権の通商政策に及ぼす影響について、米シンクタンク、ケイトー研究所のリンゼー貿易政策研究センター所長に聞いた。
――輸入制限発動への日欧の反発が激しい。
「大統領は非常にまずい決断をしたと思う。(対象製品が多いうえ関税率が高いなど)当初予想していた以上に悪い内容で、世界貿易に打撃を与えずにはいないだろう」
――大統領が決断に踏み切った理由は。
「極めて政治的な動機だ。鉄鋼産業も景気後退で多くの失業者を出したが、他の産業に比べて失業者が多いとは言えず、政府が優先して支援しなければならない理由は経済的な側面からは見当たらない」
「鉄鋼業界や鉄鋼労組は結束力が強く、過去の経験の蓄積から政治家を動かす知恵にもたけている。今回も(秋に議会中間選挙があるなどの)政治的状況をうまく活用した。だがセーフガードは業界の構造改革を先送りするだけだ」
――大統領が鉄鋼セーフガードを求める議会に譲歩したのは、自由貿易的な法案を今後通しやすくするため「必要悪」の決断だったと評価する声もある。
「一部のエコノミストがそう主張しているが、賛成できない。自由貿易が世界経済にとって好ましいと主張してきた米国が逆行する決断をしたことで、他の国に保護主義的な政策をとる格好の口実を与えてしまった。この打撃は大きい」
――世界貿易機関(WTO)の新多角的通商交渉(新ラウンド)への影響は。
「新ラウンドが本格化するのはまだ先の話だ。だが今回の決定が米国の交渉力に長期にわたってマイナスの影響を与え続けることになるのは間違いない。通商分野で、ブッシュ大統領が4年の任期中に何かめざましい成果を上げる可能性は小さくなったとさえ言えるだろう」
(ワシントン=吉田透)