ソフトバンクが5割弱の株式を持つ「あおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)」の大半の株を売却する方針を固めたことが分かった。米投資ファンドのサーベラスなどが買収に名乗りを上げているという。積極的なベンチャー投資でソフトバンク・グループを築き上げた孫正義氏だが、ITバブル崩壊などで財務体質が悪化。かつての孫帝国の面影は今はなく、資産の切り売りで急場をしのいでいる感じだ。
ソフトバンクは平成12年9月、経営破綻した旧日債銀をオリックス、東京海上火災保険の3社で共同買収した。ソフトバンクは48.87%の株式を持つ筆頭株主となっているが、19日付の日本経済新聞によると、同社は株式の大半を売却する方針を固め、オリックス、東京海上と協議に入ったという。
今夏をメドに3社で売却先や株式数などを決定する方向だが、オリックスと東京海上は外資の出資比率が突出することに否定的とみられ、サーベラス以外の買い手がみつからない場合にはソフトバンクが株式を保有し続ける可能性もあるという。
ソフトバンクは旧日債銀買収で約490億円を出資したが、全株式を売却すると 1000億円程度の収入になるという。
孫氏は、ベンチャー企業に投資しては次々と新規上場させて資金を膨らませていく「時価総額経営」を標榜していたが、ITバブルの崩壊で株価は急落。ソフトバンク自体の株価も一時1542円まで下げた。
約4800億円の有利子負債(昨年9月末現在)が財務を圧縮する一方、グループ事業の柱となりつつあるブロードバンド事業では新たな投資の“元手”が必要となっている。
今月1日には、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ株を117億円で日本テレビに売却。子会社の株式売却や解散も相次いでいるほか、出資するナスダック・ジャパン市場も低迷している。
さらに、グループのイー・トレード証券が志村化工株の株価操作事件に関連して家宅捜索を受けるなど信用も揺らいでおり、孫帝国は正念場を迎えつつある。