「(ペイオフ解禁に向けて)銀行の体制は整備された。ただし、信用金庫と信用組合にはもう少し努力してもらっている−」
去る3月16日、柳沢伯夫金融担当相は閣議後の定例記者会見の席上、こう言って胸を張った。
この柳沢発言を額面通りに受け止めるとするならば、事実上の“銀行安全宣言”ということになるだろう。
かといって、すべての預金受入金融機関に対して、“安全宣言”が下されたわけではない。信金、信組といった中小・零細金融機関については、注意を払う必要アリとしたのである。
「もっとも、その信金・信組にしても、金融庁としては3月末ギリギリまで破綻処理を続け、4月1日からスタートする“ペイオフ解禁”には間に合わせるつもりなのです−」(金融庁幹部)
この「間に合わせる」とは、柳沢金融担当相がこれまで繰り返し強調してきた「4月1日にはすべてが健全な金融機関である状態にする」という“公約”を実現することを意味する、とみていいだろう。
「この“公約”を何が何でも実現するために金融庁−というよりも出先機関である各財務局は、相当無理をしている、と言っていい。信金・信組に関して言えば、自己資本比率が4%を下回った段階で、破綻に追い込まれるケースが続出しているのです−」(都内に本店を置く信金理事長)
国内専業金融機関の場合、4%以上の自己資本比率を維持することが義務付けられている。仮に4%を下回った場合、金融庁から早期是正措置が発動され、当該金融機関は同庁の管理下に置かれ、自己資本比率の回復計画の策定と実行が義務づけられることになる。
「もっともこれまで金融庁は、自己資本比率が0%を下回り債務超過にならない限り、破綻認定はしてこなかったのです。ところが昨年の10月以降、信金・信組に関しては自己資本比率が4%を下回った途端、自主的に破綻処理申請を行うよう、信金・信組に対して強く迫るようになったのです」(前述の信金理事長)
関東地区に本店を置く信組の“元理事長”が言う。
「当信組が金融庁に対して破綻処理申請を行った時点において、自己資本比率はまだ2%弱程度あったのです。本来なら自己資本増強を図るために、一定期間の猶予が与えられるべき状態です。ところが、関東財務局がそれを認めてくれなかったのです。担当官が来て言うには、『理事長、4月1日以降に債務超過に陥った場合には、当然のことながら経営破綻ということになりますが、預金の全額保護は行われません。そうなると預金者に迷惑をかけることになる。それでもいいのですか。アナタはそれでも責任を持てますか−』と。こう言われてしまっては、私としても経営継続をあきらめるしかなかった」
こうしたケースから判断しても金融庁サイドが、自己資本比率が4%を下回った信金・信組に対しては、強制的に退場を促している、ということは明らかだろう。
「とはいえ、地域経済の実情を全く無視した金融庁の対応は、今後大きな禍根を残すことになるでしょう」(前述の信金理事長)