4月1日のペイオフ解禁(金融機関破たん時の預金保護を元本1千万円までとその利息とする措置)を控え、宗教団体が対応に追われている。主要教団の運用資産は100億円を超すだけに、「信者から集めた浄財で損は出せない」(新宗教系教団)と懸命だ。
浄土真宗本願寺派総本山の西本願寺(京都市)は、今月4日から、「ペイオフ対策に関する内規」に沿った資産運用を始めた。これまで、全国のお寺や門信徒から集めたお布施などは、都市銀行や地方銀行の定期預金を中心に運用してきたが、3月中に順次、普通預金に移していく。
普通預金が「全額保護」の対象から外れる03年4月からは、銀行の自己資本比率や格付け、株価などを参考に預け先を見直す。内規は、国債での運用も初めて認めた。
西本願寺は昨年11月、経済学者や金融実務家が協力する専門委員会を設け、ペイオフ対策を練ってきた。各地のお寺からの相談には「預金先を分散させ、残高を1千万円以下にするよう勧めている」(財務部)という。
真宗大谷派本山の東本願寺(京都市)も、昨年5月に運用規則を改め、定期預金は今月中に普通預金に移し替える。国債以外に、地方債や政府保証債での資金運用もできるようにした。
曹洞宗宗務庁(東京都港区)は、奨学金、共済事業などの特別会計ごとに分けていた口座を、4月から1つにまとめる。普通預金への預け替えを含め、臨機応変に対応するための集中管理だ。債券での運用もできるようにした。
約8万の神社を統括する神社本庁(東京都渋谷区)は昨秋、神職向けの機関誌でペイオフ対策に触れた。本庁は、すでに普通預金への預け替えを始めているほか、運用方法を検討する専門委員会の設置を検討している。
超低金利の下で、ペイオフ対策にかかわりなく銀行離れが進んでいる、との指摘もある。
新宗教系の69教団が加盟する新日本宗教団体連合会(新宗連、東京都渋谷区)によると、一部教団は銀行預金から外債や株式に資金を移した。新宗連自身も数年前から、満期を迎えた定期預金を国債や電力債などに切り替えている。
ただ、ある加盟教団は「銀行員の信者も少なくないので、むやみに預金を引き揚げるわけにはいかない」と明かす。宗教団体ならではの「運用難」といえそうだ。
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