「目標! 簿記3級」−−。全国の国立大学の事務局で、こんな目標を掲げた勉強会がさかんに開かれている。文部科学省の付属機関である国立大が04年度以降に法人化され、国の傘から離れる。それに伴い、一般企業並みの複式簿記が原則になるからだ。「官」から「民」へ、職員らは頭の切りかえに躍起だ。
国立大99校の会計は家庭の家計簿と同じように単式簿記で運営されている。複式簿記になると、貸借対照表で財産残高を明らかにするなど会計システムが根本から変わる。
これを見越して、各大学が公認会計士などの専門家を招いての研修に乗り出した。いまから新会計システムに習熟するねらいだ。
東大では昨年秋から今年2月まで、経理畑の職員約30人が計18回(各回2時間)の研修を受けた。内容は日本商工会議所の簿記検定3級レベルで、商業高校の先生が講師をつとめた。
名古屋大、山口大のように、企業会計にくわしい自校教官のもとで勉強会を開く例もある。各大学は簿記研修を受けた職員に検定を受けるよう求めている。たとえば山形大では約30人が3級の検定に合格した。
国立学校財務センターは、レベルが高い2級合格をめざす合宿形式の研修を東京で開いている。昨年は約70人が参加した。
公認会計士の組織、中央青山監査法人(東京)はすでに北海道から沖縄まで全国約60校に講師を派遣した。「新システムで大学財政、経営がより開かれたものになる。法人に衣替えした国の研究機関などの例をもとに、現在の官庁会計とどう違うかを知ってもらう」と担当部長は言う。
ある大学の主計課長は「法人化すれば、大学ごとの経営能力が問われ、親方日の丸式は通用しなくなる。早めに複式簿記の技能を身につけることで職員の意識改革につなげたい」と話している。(15:55)