「いったい、永代信用組合の金融整理管財人と関東財務局はどのような基準に基づいて事業譲渡先を選定したんだ。永代信組の事業譲渡先決定プロセスが外部に漏れるようなことがあったら大変なことになるぞ…」
金融庁幹部がこう言ってみせる。
去る2月13日、経営破たんに追い込まれた永代信組(本店・東京都江東区)の金融整理管財人は、同信組を東京東信金(本店・東京都墨田区)と昭和信金(本店・東京都世田谷区)の都内2信金に事業譲渡することで、両信金と基本合意に至った。
「永代信組の“受け皿”には、東京東・昭和信金連合以外に、東京スター銀行と関西さわやか銀行も名乗りをあげていたのです。我々−つまり金融庁サイドが得ている情報では、東京スター銀行や関西さわやか銀行が提示した譲渡価格の方が東京東・昭和信金連合よりも断然高い水準にあった、となっている。確かに経営破たんした金融機関の事業譲渡先を選定するにあたっては、価格がすべてではないことも事実。しかし、価格面で下回る受け皿候補に優先交渉権を与えるためには、それなりの理由が必要だ。ところが今回の永代信組のケースでは、合理的な理由が見当たらないのです」(金融庁幹部)
“国民負担最小化”という原則から言っても、譲渡価格の面で最も上位にある受け皿候補が、まず最有力候補として扱われることになるのが一般的、と言えるだろう。とはいえ、価格以外の諸条件−例えば、受け入れ従業員数や店舗−−も勘案する形で最終的に譲渡先が確定する。
「しかし今回のケースでは、そうした諸条件の面でも最も劣ったところが事業譲渡先に選定されてしまったフシがあるのです…」(前述の金融庁幹部)
その最たる例が、譲渡店舗数と受け皿に移籍する従業員の数だ。店舗数に関して言えば、東京東・昭和信金連合は、永代信組が現在抱える26店舗のうち、わずか5店舗しか引き受けない。(東京東信金…4、昭和信金…1)この結果、21店舗は閉鎖に追い込まれることになる。
これに対し筆者の得ている情報では、全店舗を引き受けるという受け皿候補もあったのだ。
「店舗を閉鎖するということは、実質的に取引先の切り捨てにつながることは間違いありません−」(都内に本店を置く信組理事長)
つまり、東京東・昭和信金連合が“受け皿”に決まったことで、そのシワ寄せを受ける取引先が続出するということに他ならない。
「さらに受け入れる従業員ですが、東京東・昭和信金サイドでは、旧永代信組の職員は原則として再雇用しない、としているのです。ところが他の受け皿候補の中には、全員を再雇用する、というところもあったのです。こうした一連の状況を考えていくと、なぜ東京東・昭和信金が最終的に事業譲渡先として選定されたのか、さっぱりわからない−」(金融庁幹部)
われわれの税金が使われて処理がおこなわれる以上、譲渡先選定のプロセスについてはきちんとした形で明らかにすべきだろう。