円安、米国経済の復調や日経平均株価の1万1000円台回復により、政府内に日本の景気に対する楽観論が広がっている。3月の月例経済報告では、2001年6月以降、景気の基調判断に盛り込まれてきた「悪化」という表現を外し、景気判断を上方修正した。早くも政府内では次年度からは景気は上向くという声が聞かれる。
「しかし、このままうまくいくと思ったら大間違いです」と、警鐘を鳴らすのは、経済アナリストの森永卓郎氏だ。
「金融庁が、営業停止をちらつかせるなどして、外資系証券会社に対する空売り規制を強化しているために株価が上がっているだけです。決算発表前の5月には、規制強化で怒り心頭の外資による売り浴びせの“逆襲”も予想され、株価の底がもう一度くる可能性があります」
さらに、森永氏はこうも指摘する。
「そもそも、株価上昇の恩恵はたくさんの株を保有している銀行にしかありません。企業の収益状況はデフレによる売上減少、資産劣化で悪化したままなのです。
デフレ対策第1弾に盛りこまれた政策の中で、一番効果を発揮したのは空売り規制です。それですら、金融危機を小康状態に保つ程度の効果しかなく、デフレの根本的解決にはとても及びません。次の“デフレ対策第2弾”がなければ日本は壊滅的状況になるでしょう。
デフレを阻止できなければ内閣総辞職するぐらいの意気込みで本当のデフレ対策を講じなければ、日本が生き返ることができません」
しかも、株価上昇で人心地ついた銀行が企業への融資締め付けの手を緩めるかといえば、そうでもないらしい。
「今の金融検査マニュアルが変わらない限り、将来性がある、あるいは再生の可能性があるからといって貸し出しを増やすわけにはいかない」(地銀幹部)
メガバンクの幹部さえ、こういう。
「メガバンクといえども、今年度の不良債権処理分しか体力が残っていない。このままデフレが続き、来年度も同じ規模の不良債権処理が必要になったら、メガバンクですら経営がおぼつかなくなる」
だから、貸したくても貸せないという論理だが、再び株価が下落し、金融不安が再燃すれば、銀行のさらなる貸し渋り、貸し剥がしが景気の足を引っ張りかねない。
銀行栄えて国滅ぶということなどあってはならない。