国際的な会計基準づくりで、米国と英国が連係して影響力を強めている。エンロン事件の発生を機に、特に企業の合併・買収(M&A)、ストックオプション(自社株購入権)、利益開示方法などで米英色が鮮明だ。国際会計基準理事会(IASB)が19日から東京で開く定例会議では、日本が孤立する恐れもある。
企業会計の国際統合を進める基準理はM&A会計に関し、買収企業がM&Aに要した金額と被買収企業の資産価値の差額(のれん代)を損益計算書に計上させる案を用意した。企業はのれん代を毎期評価し直し、価値が下がった場合は損失を立てなければならない。東京会議で詰め、4月のロンドンでの理事会で正式に決める。
この案は基準理と、米国の企業会計基準を決める民間の独立機関である米財務会計基準審議会(FASB)の共同チームが作った。米審議会は2001年に同様の国内基準を打ち出しており、基準理も追随しやすかった。
役員や従業員に与えるストックオプションは現金による報酬と同じ性格を持つため、人件費に計上させる方向だ。英会計基準審議会が議論を主導している。米審議会も90年代半ばに同様の国内基準を検討したが、人件費計上せずに利益を底上げしている米ハイテク業界の反対で断念した。「議論を英主導とすることで米国内圧力をかわしたい」との読みが米側にある。
東京会議では、土地など固定資産の時価評価を毎期の利益に反映させるための話し合いも本格化する。たたき台は英審議会を中心に作成した。
こうした現状に対し、日本では「米英主導で話が進みすぎる」(経団連)との不満が募っている。対等合併が多い日本では、M&Aでの買収・被買収を会計上必ずしも明確に区別しない。ストックオプションも定着したばかりで、その活用に水を差しかねない基準には異論が出やすい。
米英は会計基準でもともと他国より長い歴史をもっている。エンロン事件後、「会計先進国の米英は歩調をそろえて会計不信を払しょくする必要がある」(基準理の米国関係者)との意識が高まっている。(ロンドン=小平龍四郎)