政府税制調査会(首相の諮問機関)は16日、税制の抜本見直しに向けた「改革基本方針」の骨格を固めた。現行の贈与税と相続税を一本化して課税する「一生累積課税方式」の採用や、利子・配当収入など金融所得を給与所得と分離して課税する「2元的所得課税」の導入など5項目が検討の柱となる。
26日の政府税調総会に示し、6月中に基本方針として取りまとめる。政府税調と並行して税制改革を検討している経済財政諮問会議は、デフレ克服に向け減税先行に傾いているが、政府税調は中長期的な制度改革を軸に検討を進める方針だ。
累積課税方式はアメリカなどが採用している。生前贈与も死亡時の遺産相続も同じ税率で課税するのが特徴だ。具体的には、生前は各年、過去の贈与の累積額をもとに税額を計算し、前年までに納めた税額を差し引いて納税する。遺産の相続時も計算方法は生前贈与と同じで、最終的な税額から生前納付分を差し引いて、生涯の資産の移転を「精算」する。
現行制度は、生前贈与(非課税限度額1人当たり年110万円)を活用して相続税負担を軽くする節税行為を防ぐため、贈与税負担が相続税より重くなるよう設定されている。累積課税方式なら、いつ贈与・相続しても、税の負担総額は変わらないため年110万円を超える財産については、現行制度より生前贈与の納税負担が軽くなり高齢者から現役世代への資産移転に弾みがつくと期待される。
「2元的所得課税」を導入すれば、金融所得ごとに税率が異なる複雑な現行制度を簡素化できるうえ、株式譲渡損が出ても、利子・配当収入と相殺することで税負担を軽減できるメリットもある。このため、経済構造改革を促すうえで必要となる「貯蓄から投資へ」の資金移動も期待できる。
これら新課税方式の導入には、納税者の資産移動や金融取引を確実に把握する必要があるため、納税者番号制度の創設も検討する。
さらに、所得税がかかる最低水準の年収を示す「課税最低限」は現在、約384万円(親子4人の標準家庭)で、国際的にも高水準にあるため、最低限を引き下げる方針。その手段として、女性の社会進出を妨げているとの指摘がある配偶者控除などの廃止・縮小を軸に検討する。所得税の最高税率引き下げなども検討する。このほか、消費税に設けられている各種免税措置や簡易課税制度などの改善、環境対策への目的税としてガソリンなどへの税率上乗せも議論する。
政府税調と諮問会議は小泉首相の指示で「21世紀のあるべき税制」を検討しており、ともに6月をめどに改革の基本方針を取りまとめる。