福岡県信用農業協同組合連合会(JA福岡信連、本所・福岡市)が、昨年末から事実上債務不履行状態に陥り元本の償還が危ぶまれているアルゼンチンの円建て国債を約190億円分保有していることが分かった。金融関係者によると、同国債への投資額はJA福岡信連が全国最大。経営への影響は少ないとみられるが、金融庁や農水省は決算での適正処理など、指導に乗り出した。
債務不履行状態のアルゼンチン債は、アルゼンチン政府が96年以降4回発行したもので、日本での発行総額は1915億円。年に2回の利子配当があり、利回りは最高で5・4%だった。信連は農協が加盟して作る金融機関で、JA福岡信連は高利回りに目をつけ、96年から購入を始めた。
JA福岡信連は大口融資先の住専(住宅金融専門会社)処理で95年度に赤字に転落。損失を取り戻そうとして、購入額が膨らんだという。
しかし、アルゼンチンは昨年秋、金融危機に陥った。12月末以降、対外債務の支払いを停止し、国債の元本が償還されない危険性が高まった。
円建て外債の返済リスクを研究している野村総合研究所の繁岡毅・上級エコノミストによると、事実上の債務不履行となった債券として、アルゼンチンの額は史上最大。「国が発行するから安全という神話は崩れた」という。
日本証券業協会によると、アルゼンチン債の時価に当たる気配値は額面100円当たり、25〜53円に下落。経営の健全性を示す自己資本比率は金融機関の場合、8%が目安とされるが、JA福岡信連は13・77%(00年3月末)あり、下落しても経営への影響は少ないとみられる。
福井正志・JA福岡信連会長の話 判断に甘さがあり(一銘柄を大量に買わない)リスク分散が必要だった。しかし、内部留保で特別積立金が200億円強あるので、損失は補てんできる。経営に問題はないと考えている。
円建て外債 外国政府が日本から資金を調達するため発行した国債。高利回りがうたい文句で、償還期限が来ると元本が返済される。円建ての発行額が多いのはメキシコ(4900億円)、ブラジル(4000億円)など。