政府は15日、新型国債発行などを柱とした国債の消化や価格を安定化するための対策法案を閣議決定した。国債発行は来年度には市場で消化する分だけで100兆円を突破するが、今後も、景気低迷で税収の落ち込みが大きいことに加え、ここ数年の大型景気対策に伴う国債の大量発行の影響で、償還向けの借換債を中心に発行額が膨らむ見通しだ。市場には供給過剰で国債が暴落するのではないかとの懸念も出ており、個人投資家向けなどの対策作りが急務になっていた。
◆大量発行
来年度の国債発行計画は、新規発行分の30兆円に、満期を迎える既発債の償還財源となる借換債69兆円、財投資金の調達にあてる財投債34兆円を加えると総額134兆円に達する。郵便貯金による引き受け分などを除いた市場での消化予定額だけでも104兆円となる。中でも借換債の増加が著しく、2008年度には127兆円とピークに達する。
これまでは、資金運用に悩む金融機関などが国債を大量購入してきたため、消化は比較的、順調だった。しかし、今後は市場での消化が滞るとの見方から、10年物国債の流通利回りは、やや上昇気味で、先月後半は一時、1・5%台半ばに急騰するなど不安定な動きを続けている。
◆対策
財務省は金利動向について表向きは平静だが「入札の度に順調に落札されるかどうか緊張する」(幹部)という。そこで、対策として、1万円から購入できる小口化した個人向けの新型国債を来年1月から発行、現在は2・5%と低い個人の保有率を高めて、安定化を図る。元本と金利部分を分離して取引できる新型国債「ストリップス債」も来年度から解禁する。分離された元本、金利部分とも購入時に最終的な利回りが確定するため、保険会社など安定運用を望む投資家の需要を見込む。
さらに、償還の集中を避けるため、買い入れ消却を積極化する。2002―07年度に、5兆2500億円分を消却する。コマーシャルペーパー(CP)などに限定されている電子決済による取引を国債にも適用、決済期間の短縮を図る。
◆課題
小林益久・メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストは「個人は国債を貯蓄代わりに長く保有するので価格安定につながるが、普及するためには利子課税の減免など優遇措置が欠かせない」と一段の対策が不可欠という。
一方で、金融機関が市場を通さずに、国債を集団で直接買い取る「シンジケート団」の取り扱いが課題に残されている。シ団は、10年物国債の4割を引き受けているが、シェアは低下傾向にあり、将来も安定的な受け皿として機能できるかどうか不透明だ。シ団を廃止し、欧米並みに数十の金融機関に一定額の落札を義務づけることも検討されているが、結論は出ておらず、国債の安定化に向けての試みは続きそうだ。
(3月15日22:10)