【ニューヨーク14日共同】
米司法当局が14日、米エネルギー大手エンロンの監査を担当していたアンダーセンの訴追手続きに入った。これにより、米5大会計事務所の一角を占める名門が倒産の危機に直面する。
アンダーセンはエンロンによる不正な会計処理を未然に防げなかった上、監査関連書類の大量廃棄が発覚したことで会計事務所の生命線である顧客の信頼を完全に喪失。企業のお目付け役であるべき立場が刑事訴追という最悪の事態に陥った。医薬品大手メルクや航空大手デルタなど大口顧客を次々と失っている。13日には大手会計事務所デロイト・トゥシュ・トーマツとアーンスト&ヤングの両大手会計事務所が買収交渉打ち切りを表明、アンダーセンは会社存続の危機に立たされた。有力顧客の流出がさらに加速するのは必至だ。
アンダーセンは書類廃棄について、エンロンの地元であるヒューストンの事務所幹部など一部の職員によるものと主張。「組織として関与した証拠はなく、起訴は職権の乱用だ」として捜査当局を強く非難しているが、信頼回復にはほど遠い状況だ。
生き残りを図るための身売り交渉も、引き受けた場合の民事、刑事両面での訴訟などリスクの大きさから買収交渉はまとまらず、新たな提携などが成立する公算は小さい。
アンダーセンが破たんすれば米企業の2割が監査法人の変更を迫られるとみられ、企業社会にも大きな影響が出そうだ。
アンダーセンは同日「司法妨害による訴追には根拠がなく、権力の乱用だ」と反発する声明を発表した。