カラ売り規制の効果か、日本株は大幅アップ。それに伴い一時はドル/円も126円台までに急騰。このまま日本の景気も回復し、さらには円安まで終わってしまうのか?
■ 円急騰!日本株暴騰!
円が急騰しています。ドル・円相場は昨年のクリスマス以来2ヶ月半ぶりに130円を割り込み、3月7日(木)の海外市場では126.5円レベルまで円高が進みました。背景には日本株の急騰があります。日経平均は4日(月)に前日から6%上昇、11,000円のラインを抜け、そのまま8日(金)には一時12,000円をつける水準にまで上昇しました。
円、日経平均、それぞれの直近の安値からの上昇幅をみると、ドル・円相場は135円から126.5円の8.5円、日経平均は9,420円から12,000円の2,600円です。率にするとそれぞれ5%、27%となります。こう見ると、円の上昇幅はそれほどでもないように見えます。しかも円はその後、じりじりと値を戻し13日(水)現在では129円台での推移となっています。
130円という大台を挟んだ動きになっているため、最近のドル・円相場の動きは非常に大きいような錯覚をしてしまいがちですが、それほど大きく動いてはいないことをまず確認しておきましょう。
■ なぜ日本株は突然上昇したのか?「日本が特別に良い」のではない?
しかし、なぜ日本株が突然上昇したのでしょう?報道では「カラ売り規制が非常に効果的だった」という解説が主流です。また、2月の最終週に発表された政府の「デフレ対策」は何も新しいことが含まれていなかったものの、その週末に佐藤工業という問題企業の法的整理報道があったため構造改革進展の期待が高まった、という声もよく聞きます。もっと基本的な景気認識として、米国経済が目に見えて回復してきた結果、日本も最悪期は脱した可能性が高いというのも、大きな上げ要因でしょう。
筆者の認識は、「今までが少々安すぎた」ため上がったに過ぎないというものです。銀行株などは、明らかに金融システムがおかしくなることを織り込んだ株価になっていたと思います。そうした意味で、「異常な株価形成」を食い止めるため「カラ売り規制」という、市場原理とはまったく反する規制を持ち出したことは効果があったのでしょう。
テロ後の安値からの上昇率を比較すると、米国(S&P500)が20%、ドイツが42%、英国が19%、日本はTOPIXでみると22%程度です。これだけ急騰したように見えても、ようやく諸外国の数字に追いついただけなのです。「日本が特別に良い」ということでは決してありません。
■ 海外では長期金利が上昇、株式も順調に上昇...本格上昇相場はまだ遠い?
日本株、円とともに、もうひとつ大きく動いたのは海外金利です。米国、欧州の10年国債利回りを見ると2月末の水準からそれぞれ0.5%、0.2%上昇しています。株式市場も順調に上げており、ダウ平均は2月末から+5%の10,600ドルと昨年6月の水準に達しています。ナスダック指数も緩慢ながら回復しています2月末と比較すると+11%となる1,900ドル越えです。ただし、水準的にはいまだテロ後の高値すら越えていません。
いわゆる在庫循環上の景気は世界中で底を打ったようです。グリーンスパン議長も「回復のスピードは緩慢になるものの、景気回復が既に進行している証拠が増えている」と議会で証言しました。焦点は、景気回復のスピードと期間に移ったようです。市場の大勢は2002年通年で3~3.5%成長を見込み始めました。これはほぼ米国の潜在成長率並みということになります。とくに下期が4%近辺と高い水準となることから、市場は年央からの年末にかけての1.5%程度の利上げを完全に織り込みました。
実際に利上げがあるかどうかは、インフレ見通しにかかってくると思われます。現在は、賃金は下がり目で原油価格も落ち着いているため、インフレの芽はほとんど無い状態です。しかしながら、原油価格は世界的な景気回復と中東情勢の緊迫からじわじわ上がっています。賃金の回復と原油価格の上昇により利上げをせざるを得なくなる場合、企業収益は芳しくなくなるでしょう。長期金利だけが上がっていくリスクを考えなければいけません。
■ さて、ドル円は...「日本だけが良くなるシナリオ」はありえない!
この時、円はどうなるでしょう?日本だけが良いという状況が想像できるでしょうか?再び「円安頼み」になる可能性が高いと思います。世界経済の回復が緩慢なため輸出の伸びは弱く、原油価格上昇から輸入が膨らみがちになるため、経常収支に圧力がかかることも十分に想定されます。再び円安が始まるのも時間の問題でしょう。
提供:株式会社FP総研