日本興業銀行が旧住専(住宅金融専門会社)向け債権を全額放棄し、税金のかからない損金として計上した処理を東京国税局が認めず、約1480億円を追徴課税したのは違法として、興銀が追徴課税の取り消しを求めた訴訟の控訴審が14日、東京高裁であった。村上敬一裁判長は「当時、住専は解散しておらず、債権が全額回収不能だったとは言えない」と述べ、興銀勝訴とした一審判決を取り消し、国税局勝訴の逆転判決を言い渡した。
興銀は1996年3月期決算で、旧住専の日本ハウジングローン(JHL)に融資した約3760億円を回収不能として債権放棄した。当時、公的資金投入の是非を巡って国会が紛糾し、住専を破たんさせる枠組みを定める住専処理法が成立していなかったことから、この時点で、住専向け債権を回収不能と見なせるかが争点となった。
判決では、「当時は住専処理法が成立するかどうか流動的な状況だった」とし、「JHLには回収の見込まれる債権が少なくとも1兆円残っていた」と認定。住専処理法が成立し、JHLが解散した後の翌年3月期決算で、損金に計上する処理をすべきだったと指摘した。
一審・東京地裁は「問題の債権は96年3月期までに事実上、回収不能になっており、興銀の会計処理は適法」と認定し、国税局の追徴課税を違法と判断。国税局に、興銀が96年8月に仮納付していた追徴課税分など約1900億円を返すよう命じていた。
興銀管理部は「誠に意外な判決で、内容を精査し、上告の方向で検討する」と話し、国税庁は「国側の主張が認められたもので、妥当な判決」としている。
(3月14日20:18)