韓国では、日本よりも一足先に2001年1月からペイオフ解禁に踏み切っているが、その“仕組み”自体は、日本のペイオフ制度とほぼ同様、といっていいだろう。ただし、ペイオフ制度によって保証される預金の上限は、5000万ウォン(約500万円)となっている。
韓国において金融危機が一気に表面化したのは1997年ごろのことだが、そのきっかけとなったのは韓国を含めアジアの主要国を襲った通貨危機だった。
韓国経済はこの通貨危機を契機にIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれることになる。
「その際にIMFサイドは、韓国では金融マーケットの規模に比べて銀行の数が多すぎる−つまりオーバーバンキング状態にある、と指摘してきたのです」(韓国政府関係者)
この“オーバーバンキング(銀行過剰)”という点でいえば、日本も韓国ときわめて似通った金融状況にあるといえる。
「韓国では“IMF管理”以前の段階では、23もの都市銀行があったのです(97年当時)。しかし、こうした都銀は破綻や合併によって、現在では20行に減少しています。しかもそのうち6行は、政府からの出資を仰ぐ形で一時的ではあるにせよ国有化されているのです」(前述の政府関係者)
韓国政府は一連の“金融危機”を処理する過程で、銀行の自己資本増強を目的とした公的資金注入や不良債権の買い取りといった施策をするために、97年から2002年1月までに155兆ウォンの財政資金を注ぎ込んできている。
そしてこの“155兆ウォン”という金額は、韓国GDPの約30%に相当するというからまさに驚異的だ。
ところがその一方で日本においては、98年から99年にかけて投入された公的資金は合計で8兆6053億円にのぼるものの、この金額はGDPのわずか2%程度にすぎない。
「そうしたこともあって、米国政府やそれに連動するIMFはしきりと『日本の公的資金投入レベルはまだまだ不十分。したがって、不良債権処理は進んでいない』という指摘をしてきている、と見るべきでしょう」(大手都銀役員)
そうなると今後、米国あるいはIMFが日本に対して、不良債権処理問題に関して攻勢を強めてくるのは明白だろう。
「今年中に、IMFは邦銀の不良債権の処理状況をチェックに入ることになっています。そして、その“IMF審査”がどのような結論を出してくるかは、もはや火を見るよりも明らかでしょう。金融庁サイドはその辺の事情を全く理解していないし、しようともしない。そこが日本にとっての最大の“悲劇”なのです」(日本政府高官)
さてこうした指摘に対して、金融庁はどのような反論をするのだろうか。
2002/3/14