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NY(ウォール・ストリート・ジャーナル）チェース・マンハッタンによるJPモルガン買収で誕生した米第２位の金融機関、JPモルガン・チェース(NYSE:JPM)は、融資で培った企業との深い関係をてこに、投資銀行業務でも業界トップの仲間入りを目指してきた。しかしこうした戦略は、エネルギー大手エンロン(ENRNQ）や光通信大手グローバル・クロッシング(GBLXQ)の経営破たんにより、裏目に出た。ウォール街では、同社が減配、幹部入れ替え、新たな合併などを検討するとの観測が広がっている。
JPモルガン・チェースは、エンロンが損失隠しに利用したとされる特別目的会社の設立を支援し、多額の資金を融資するなど、同社と深くかかわった。事情に詳しい筋によると、同業ダイナジー(NYSE:DYN)によるエンロン買収計画がとん挫の危機に直面した時、JPモルガンは提案していた出資金額を数回に渡って引き上げたという。これについて、同社は否定している。ダイナジーは結局、買収合意を撤回し、エンロンは連邦破産法11条の適用申請に追い込まれた。
エンロン問題により、かつてはリスク管理に精通していると評価されていたJPモルガンに対する信頼は大きく揺らぎ、株価は急落。２年前には64ドルの高値をつけてきた株価は、今年２月に28ドル近辺に急落。その後は相場全体の回復を受けて持ち直しており、13日終値は、前日比88セント（2.43％）安の35.37ドル。
JPモルガン株がこのまま回復を続けるとみる向きは多くない。ニューヨークのファンドマネジャー、マイケル・ホランド氏は、かつては運用するファンドの中核銘柄だったJPモルガン株をすべて売却した。「投資家はJPモルガンに『いったい何が起きているのか』知りたがっているが、はっきりとして答えは見つからない」と同氏は話す。
ウォール街関係者の間では、JPモルガンが、配当金の削減、経営陣の人事刷新、別の大手金融機関との合併などを模索する可能性があると予想する声が聞かれている。合併相手としては、これまでにもメリルリンチ(NYSE:MER)とモルガン・スタンレー(NYSE:MWD)の名前がたびたび挙がったことはある。これら２社の関係者はコメントを控えた。
こうした観測に対し、JPモルガンのウィリアム・ハリソン最高経営責任者（CEO)はインタビューで、減配も新たな合併も必要ないと語った。同CEOは、投資銀行業務の強化は最優先課題だったことは認めたものの、それによって思慮深い融資姿勢が損なわれたことはない、と述べた。
JPモルガンが、投資銀行業務を重視する路線を軌道修正する兆しもみられている。同社は今年初め、経営難に陥っているプロビディアンから、約82億ドル相当のクレジットカードローンを買収している。これは、同社が消費者向け事業の拡大に再び真剣に取り組む姿勢と受けとめられている。
JPモルガンの問題の種がまかれたのは、1999年にさかのぼる。当時のチェース・マンハッタンは、融資顧客から投資銀行業務も獲得する「ワンストップ・ショッピング」のビジネスモデルを目指し始めていたいた。ライバルのシティコープが、ソロモン・スミス・バーニーを傘下にもつトラベラーズと合併し、1998年にシティグループ(NYSE:C)が誕生したことも背景にある。
チェースは1999年９月にハイテク企業の引き受けを専門とする証券会社ハンブレクト＆クイストを13憶5000万ドルで買収。インターネットバブルがはじけ、株式相場が下落した2000年に入ってからも２月には英ロバートフレミングを買収し、その３カ月後にはビーコン・グループを、９月にはJPモルガンを買収すると発表した。
こうして誕生したJPモルガン・チェースは、投資銀行事業の拡大戦略は今後実を結ぶと主張するが、問題はそれがいつかということだ。これまでの成績は芳しくない。社債引き受けは伸びているものの、同社主導でまとめられた融資の顧客企業のうち、2000年１月から2001年６月までに同社が株式引き受けを受注できたのは4.4％にすぎず、合併・買収（M&A)の案件も3.25％に限られている。
（３月14日付のHeard On The Streetより）
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