<米国長期金利上昇の理由は何か>
2月末以降の2週間で、米国の長期金利が4.8%台から5.3%台へと急騰しました。昨年11月は4.2%台であったことを考えると、僅か3ヵ月間で1.1ポイントも上昇したわけです。
では、なぜこれほどまでに金利が上昇しているのでしょうか。新聞には、米国経済が予想外の復調を示し、株価も堅調であることから、利下げ期待が遠のいたと書いてあります。しかし各種経済統計を見る限り、それほど景気が好転しているとは思えません。それでは、マーケットな何を先見しているのでしょうか。
例えば、98年10月に米国の長期金利は4.2%で底打ちしましたが、その後しばらく保ち合った後、翌99年1月から急騰しています。そして、米国の金利に少し遅れて原油価格が同じような動きをしていますが(図)、NATO軍がユーゴ空爆を開始したのは2月末でした。
つまり、米国金利は原油価格よりも早い段階で、ユーゴ空爆の実施を予見していたことになります。空爆開始に先だって原油価格が底打ち反転しているのは、延べ6千機の航空機を出動させるために、大量の航空燃料を調達する必要があったからと推測されます。では、どうして原油価格より先に金利が上昇しているのでしょうか。それは軍事特需によって産業界に膨大な資金需要が発生したため、と考えられます。
<気になる原油価格の上昇>
私はマーケットの先見性と、最近の中東情勢を考え合わせると、今回の金利上昇には98年末前後と似たような背景があると思えてなりません。具体的には、米軍のイラク攻撃がこの5〜6月にもあるかもしれないということです。
その根拠は、@98年と同様、過去2年間に亘って低下してきた長期金利が底入れした、A長期金利に少し遅れて原油価格も底入れした、B世界的に株価も上昇している(軍事特需を反映?)、C有事に反応する金が上昇している、D軍事関係の報道が増えている(3月10日付の英オブザーバー紙は、「米国がイラク軍事行動で英軍2万5千人派遣を打診」したことを報道。)、Eイスラエル・パレスチナ間の交渉が難航している、といったものです。
5月末にイラクに対する国連制裁期限が切れた後の国際情勢がどうなるのか、このことが今後のマーケットを考えるうえで重要なポイントとなるのではないでしょうか。