交渉難航−。厳しい雇用情勢が続く不況下で13日、金属大手の集中回答日を迎えた。一部で好業績を維持する自動車や、造船重機の交渉は決着が当日までずれ込み、電機、鉄鋼など有力労組もベア断念が相次ぐなど異例の展開。主要4業種がそろってベア・ゼロとなる可能性もある。「例年ならトヨタなど主要な所は2、3日前に決着しているのに」と自動車総連関係者からはぼやきが。ベアは断念したものの、「雇用維持」の文書化を取り付けた鉄鋼労連関係者からは、安どの声が漏れた。
金属労協(IMF・JC)加盟の自動車、電機など主要4業種の組合に対し、経営側は13日、一斉に回答。賃金のベースアップを要求している自動車、造船重機の交渉が難航。相場に影響力を持つトヨタ自動車がベア・ゼロの方針で、造船重機もゼロ回答の見込み。これにより、主要4業種が初めてすべてベア・ゼロとなる可能性がある。雇用維持を最優先に掲げた電機、鉄鋼は、労使が雇用安定への取り組みを文書化することで合意した。
デフレ、厳しい雇用情勢など逆風の中、労組側のベア断念が相次ぎ、賃上げ率は昨年の2.01%(厚生労働省調べ)を下回り、過去最低を更新するのは確実な情勢だ。
自動車、造船重機のベア交渉は決着が集中回答の当日にずれ込む異例の展開となった。業績の良い企業が比較的多い自動車だが、国際競争力の強化を優先する経営側はベア実施に例年以上に消極的。トヨタ自動車がベア・ゼロの方針を崩しておらず、他社が追随する可能性がある。造船重機は主要大手が軒並みベア・ゼロの可能性が高い。
業績が厳しい電機、鉄鋼の労組はベア断念の代わりに、雇用確保に努める雇用安定協定や労使宣言などの文書化を求め、電機は定期昇給分など賃金体系の維持も要求した。経営側は業績不振を理由に反発したが、電機は労使共同で雇用安定を図るメッセージを発表して合意。定昇分確保でほぼ決着する見通し。鉄鋼は雇用維持に努める内容で、確認書などの形で文書化することで合意した。
一時金は、業績好調のトヨタが満額の5カ月プラス39万円を確実にしている。電機は年間4.0カ月以上で事実上決着。鉄鋼大手5社はいずれも前年実績を大幅に割る見込み。