「今年4月1日のペイオフ解禁を直前に控え、地銀・第2地銀各行普通預金残高がまさに異常なまでの伸びを示しています。特に地銀全体では、昨年1年間で15%強も普通預金残高が増加しているのが実情なのです…」
関東地区に本店を置く大手地銀役員がこう言ってみせる。
いよいよ来月1日から、ペイオフ制度の凍結が一部分解除されることとなる。“ペイオフ解禁”とはいうものの、その対象は来年3月末までは“定期性預金”だけに限定され、普通預金、当座預金、別段預金といった“決済性預金”については2003年3月末までは全額保護される。
こうしたことから、ここへ来て“定期性預金”から普通預金などの“決済性預金”へ怒濤のような資金シフトが起こってきているのが実情だ。
「普通預金残高が急増している理由は、単に銀行内でのそうした“資金シフト”だけに限定されているというわけではありません。地方公共団体や大企業が大口の預金を増やしつつあるのも大きな一因です」(前述の大手地銀役員)
もっともこうした状況を、地銀・第2地銀サイドでは決して歓迎しているわけではない。
「本音を言えば、むしろ迷惑」(前述の大手地銀役員)
このため一部の地銀・第2地銀では、これ以上の普通預金流入にブレーキをかけるために、金利の引き下げに踏み切ったのである。
今年1月15日、銀行業界の中でトップクラスの格付けを誇る静岡銀行が、普通預金金利を0.01%から0.005%に引き下げることに踏み切った。
現在、大手都銀の普通預金の金利が0.02%であることと比較すると、静岡銀行の金利水準はその4分の1ということになる。
「しかも驚くべきことに、静岡銀行のケースをはるかに上回る−正確には“下回る”−金利を設定する銀行も出てきたのです。今年2月4日には横浜銀行が普通預金の金利を、0.01%から0.002%に引き下げてきたのです。この金利水準は、大手都銀平均の10分の1というレベルなのです」(前述の大手地銀役員)
この“0.002%”という金利水準は、もはや実質的に“ゼロ金利”と呼ぶべきだろう。
そして、この横浜銀行に追随する銀行が続出しつつあるのが実情なのだ。
現在、普通預金金利を“0.005%”に設定している地銀・第2地銀は以下の通り。
〈0.002%〉
横浜、北洋、山梨中央、十八、中国、福岡、筑邦、佐賀、親和、大分、宮崎、鹿児島、西京、佐賀共栄、豊和
〈0.005%〉
静岡、北国、スルガ、清水、富山、静岡中央、中部、東邦、武蔵野、福井、百五、福邦
ここで注意すべきなのは、低金利銀行=優良銀行・健全銀行とはならない点だ。
「この種の“低金利化路線”では出遅れの感のある東海、関西両地区の地銀、第2地銀が今後どう出てくるかが、ポイントです」(大手都銀幹部)
どうやらペイオフ解禁は、“ゼロ金利時代”を一気に加速しそうだ。
2002/3/13