2月末のデフレ対策発表を機に株価は急騰、3月危機説は吹き飛んでしまった。株高を演出したのは空売り規制ではなく、PKO(株価維持策)といわれる。しかし、政府の諮問機関が12日、年金資金を注ぎ込んだ相場操作に公然と反対意見を表明した。4月以降も年金資金の流入に期待する声も強いが、公的資金が普通の投資家として売買するようになれば、株式市場はこれまで経験しなかった「痛み」にさらされることになる。
●「年金は被保険者のもの」〜政府諮問機関がPKOに「NO!」
「積立金はあくまで被保険者のために運用し、人為的な株価対策に活用するべきではない」―PKOにキッパリと「NO」を突き付けたのは、社会保障審議会の年金資金運用分科会だ。通常、こうした審議会は政府の意に沿った結論を出すものだが、今回ばかりは年金運用資金を株価対策に使わないことを全会一致で決め、坂口力厚生労働相に答申した。デフレ対策をまとめる過程で、一部与党議員らが公的年金資金を株価維持に活用すべきと主張していたが、若杉敬明分科会長(東大教授)らは被保険者の利益を優先するという筋を通した。
●PKO、建て前では存在しないことに
PKOは新聞紙面にも登場するが、政府がPKOの存在を公式に認めたことはない。7日の福田官房長官の記者会見でも「年金資金が株価を押し上げている」との記者の指摘に、「事実関係は知らない」と述べ、否定も肯定もしなかった。
しかし、公的年金による買い支えはバブル崩壊後、ある時は秘密裏に、ある時は公然と行われてきた。1990年代中ごろには、公的資金がほぼ底を尽いたとの専門紙記事をきっかけに相場が崩れたことさえあった。
今回の上昇局面では、年金資金が週1000億円規模で注ぎ込まれたといわれる。2001年度は、5月から9月にかけて平均株価は5000円も下がったが、公的資金は不気味なほど動かなかった。それだけに、買い余力は十分にあるとみられている。
●金融庁の圧力増大〜便乗する運用会社も
金融庁は証券会社や運用会社にさまざまな圧力を加えているようだ。大口売りを出した証券会社に電話を掛け、守秘義務を踏みにじって売り主を聞き出すなどは1990年代からの常套手段。最近は「運用会社に、キャッシュポジションを減らして株買いを促す動きもある」(外資系投資会社)という。ただ、運用会社サイドからは「当局に目を付けられたら、どんな嫌がらせをされるか分からない。期末株価が高ければ運用成績がアップする利点もあり、長いものには巻かれた方が得」との声も出ている。
しかし、決算期末を越えた4月以降は株価を操作する動機がなくなる上、露骨な買い介入もやりにくくなる。「銀行が決算発表する5月まで支え続ける」(シンクタンク研究員)との見方もあるが、いずれにせよPKO相場はこれで見納めかもしれない。
(半沢 昭悟)