経営破たんしたマイカルが行った不動産証券化取引に関する「賃料」支払いが継続されることになり、危機は当面、回避された。マイカルの管財人と資産管理会社が12日、合意した。両者は「賃料」支払いをめぐって、その名目や水準そのものの見直しなどで対立していた。
資産管理会社であるエイエムリサーチアンドリポートの浅井俊彦取締役がブルームバーグ・ニュースに明らかにしたところによると、同社とマイカルの法律管財人代理および事業管財人であるイオンとの12日の協議で、マイカル側は契約通り3月分の賃料を支払うことを表明、両者は4月以降も協議を続けることで合意した。
「歩み寄りが可能」との感触
浅井氏は「こちら側の考え方にも理解を示して頂き、時間をかければ歩み寄りが可能だという感触が得られた」と指摘した。
賃料の支払いをめぐる協議について、資産管理会社側は「年初から2月にかけてのイオンとの協議では、スタンスの隔たりが大きいと感じていた」(浅井氏)と危機感を募らせていた。
管財人側は当初、協議の期限を3月末としていたため、協議が決裂すれば賃料支払いが停止する可能性が懸念されていた。
「更生担保債権」
マイカルは破たん前の99年と2000年に合計20店舗を証券化した。特別目的会社(SPC)を通じて合計908億円の商業用不動産担保証券(CMBS)を発行したほか、日本政策投資銀行、農林中央金庫、富士銀行からの借り入れなどにより、総額1385億円を調達した。
民事再生法適用を申請して経営破たんした2001年9月以降も、賃料を支払いながら、これらの店舗で営業を続けている。2001年11月からは会社更生法へ移行し、イオンがスポンサー企業に決定した。
昨年12月の賃料支払いの際、マイカル側が「この資産流動化取引に関して会社更生手続きの下で適切な解決を図ることができるよう調査中で、混乱を避けるために賃料相当額を暫定的に支払うが、共益債権として支払うものではない」と通知したことが波紋を呼んだ。
「共益債権」ではなく「更正担保債権」として扱うのであれば、マイカルが賃料の支払いを停止して賃貸人が退去を求めても、マイカルが応じない可能性があるため、法廷闘争に発展する可能性があると指摘されていた。
論争が長引けば、投資家が混乱して日本の証券化市場を壊しかねないと懸念されていた。「今後の協議では、賃貸借契約の内容を再検討し、必要があれば投資家の合意を得た上で、契約内容を変更する可能性もある」(浅井氏)としている。