パソコン価格が今年5月以降に発売される夏モデルで一斉に値上げすることになりそうだ。要因はパーツ価格の上昇と円安で、主要パソコンメーカーなどによれば価格アップの比率は10%〜20%程度になりそうだ、という。さらに今回の動きが長期化するのでは、といった観測も出ており、ただでさえパソコン需要が停滞している今、この値上げが需要を直撃しそうと業界内では戦々恐々でみつめている。
●値上げは外的要因〜どのメーカーにも共通する
パソコンの値上げは、収益悪化に苦しむメーカーが値を上げるという内的な要因ではなく、パーツ価格の上昇などによる外的要因によるもの。そのため、すべてのパソコンメーカーに共通した課題だといっていい。とくに価格の上げ幅が大きいパーツはDRAM。すでに需要に供給が追いつかない状態が続いており、昨年後半に比べて、取引価格で200%の価格上昇という事態にまで陥っている。
また、昨年来、半導体メーカーが相次ぎDRAM事業からの撤退を発表、これにより今後の設備投資が縮小していることから、長期的に供給量がひっ迫するとの見通しも出ている。
●液晶ディスプレイも取引価格で2割程度上がっている?
同じくパーツ価格が上昇しているのが液晶ディスプレイ。ノートパソコンだけでなく、デスクトップパソコンでも液晶ディスプレイが搭載されるようになったこと、携帯電話や家電製品をはじめとする各分野での利用が増加したことで需要が拡大している。これも年末に比べて、取引価格で20%程度の価格上昇になっているという。今年末には、価格も一服するだろうとの見方が出ているが、いずれにしろ夏モデルの価格
に大きな影響を与えるのは必至の情勢だ。
●パソコン需要の回復は2003年にズレ込む?
業界の最大の懸念は、こういった動きがパソコンの年間出荷にどう影響してくるかだ。すでに業界内では、2002年のパソコン需要予測は前年割れと見込んでおり、早くても今年10月以降の需要回復との見通しを示している。
しかし、ここで思わぬ値上げを強いられたことで、ユーザーの買い控えが起こるとの観測も出始めており、もう一段の下方修正もあり得る、との見方が有力だ。関係者の間では需要回復が年明けまで持ち越されるのではないか、との不安声も聞こえ始めている。パーツ価格上昇と円安の影響によるパソコンの値上げ―期待されていた需要回復に重くのしかかってくることになりそうだ。
[中上真吾 2002/04/10 17:12]